2014.11.25 のニュース
ダブル安吹き荒れる冬商戦
原油安と円安のダブル安が同時進行で発生している。2つの異常事態が重なり合うことで、円建て原油価格はブレーキを踏みながら長い急坂を下りている格好だ。今年の中東産原油の最高値は6月23日の1バレル111.44㌦である。原油価格は10月以降、本格的に下落を始め、直近値は75.57㌦、下落幅は35.87㌦に達する。一方、円建て原油価格の最高値は㍑72.3円から55.8円まで下がったものの、下げ幅は16.5円にとどまる。
為替TTS相場が6月23日のまま変わらなかったと仮定すると、直近値は49円、下落幅は23.3円に拡大する。底が抜けたような卸価格の急落は勢いを増し、小売市況がより大混乱したことは間違いない。激戦地を中心に先取り値下げが深刻化しただろう。現行の系列仕切りは日々下落する業転価格に対して週単位の後追い対応となるため、そのタイムラグから業転格差もより大幅化したはずである。増して、月決め仕切り方式などが再導入されていたら、甚大な格差が発生していたことになる。
一方、逆はさらに苦しい上り坂となる。同期間、原油安が発生せず、円安だけが起こっていたらどうか。直近値は82.3円まで上昇、値上がり幅は10円と試算される。SS業界はコスト転嫁に苦しみ、高値によるガソリンなどの減販はさらに深刻化したと推測できる。まさに塗炭の苦しみである。
リーマンショック以来となる大暴落も、さらに厳しいコストアップも、ここまでは回避されている。SS業界の中にはガソリンなどの需要回復のため、もっと低価格化が進むことを望む声は多い。実際、ガソリン小売価格が下がるに連れ、販売量の回復を実感しているSS経営者にとってはじりじりとしか下がらない卸価格に焦燥感もあるが、ここは我慢の時である。下がり基調の中、適正マージンを確保するための踏ん張り時ともいえる。
我慢といえば、高値時に抱えた製品在庫の処分がある。下げ基調の中、在庫処分で売り急ぐ傾向は強まる。低在庫のガソリンはまだ良いが、シーズン前に一気に例年並みまで在庫を積み上げた灯油は厳しい。寒気到来の予測は難しく、安定供給上の責務もある。原油も為替も相場次第で決まる。精販揃って、我々はまだ価格大変動の真っ只中にあることを認識したい。波乱の今冬商戦、火傷することなく手堅く切り抜けたい。