日刊ニュース

2014.12.28 のニュース

メジャーのいなくなる日

明治以来100年以上、国内市場の主要プレイヤーであった石油メジャーが去るかもしれない。先週末、出光が昭和シェルに対し5千億円の借入資金でTOB(株式公開買付)を行い、子会社化を目指すなどと報じられた。筆頭株主のロイヤルダッチ・シェルはTOBに応じる構えらしい。もし実現すればシェルが日本市場から撤退することになる。
 1876年、横浜にサミュエル商会が設立され、1900年にその石油部門がライジングサン石油として独立。戦後の48年にはライジングサン石油がシェル石油に名称を変え、現在の昭和シェルへと続く。2004年以降はサウジアラムコ出資を昭和シェルが受け入れたため、シェルの出資比率は33.24%まで低下したが、依然強い影響力を維持してきた。「シェルが昭シ株を売却する」という見方はここ数年業界内に大きく広まっていたが、いよいよ噂が現実に近づいてきたようだ。業界の関心はTOBが本当に実現するのか、アラムコ保有株はどうなるのか、“シェル”マークは継続されるのかなどその先に移り出している。
 欧米メジャーは日本から退潮の一途である。始まりは特石法廃止の96年4月、日本石油(現JX)が日石精製に出資していた米シェブロン系カルテックスの全株式(800万株)を2千億円で買収し、カルテックスが完全撤退した。2年前の12年には東燃ゼネラルが親会社エクソンモービル有限会社の持分99%を3020億円で取得、13年には東燃ゼネの三井石油買収に伴い、三井物産がエクソンから東燃ゼネ株を買い取った。その結果、東燃ゼネへのエクソンの出資比率は12.21%まで低下し、事実上の大幅撤退となった。シェル撤退が現実化すればこれが最後のメジャー株となる。
 メジャーは利益率の高い上流への特化を進め、世界的に精製・小売りから撤退している。特に日本市場は規制緩和後の長い競争激化に加え、ガソリンなどの需要減も進む。メジャーからみれば「もう儲からない」と映るのであろう。明治・近代化の時代にシェルやモービルの前身が、戦後昭和の復興期にエッソなどが参入してきたことを思い返せば、メジャー撤退は日本経済の明暗とも重なる。来年はさらに激動が予感される。メジャーなき後の国内市場にとって安定供給はもちろん、民族系元売の責任はこれまでになく重いものになる。

提供元:全国石油商業組合連合会
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