2015.01.14 のニュース
原油急落 50ドル割れで戸惑い 予測は難しく計画の策定は貴慮
年明けの原油価格は50ドル/バーレルを割る状況が続き、予想外の展開となり、上流(石油開発業)、中流(精製・元売)。下流(流通)とも戸惑いをみせている。どこまで値下がりするのかは誰も分らないが、30~40ドル説も出ている。15年は予測が難しく計画の策定には苦慮している。
15年の原油価格の見通しを、昨年末には機関が発表しているが、エネ研では、基準ケースでWTIは60ドル(14年は92.91ドル)、ブレントで65ドル、ドバイで63ドルとしており、プラス・マイナス10ドルとして、最大20ドルの触れ幅をみている。米国エネルギー情報局はブレントで68ドルを予想している。
このままの安値が続けば中小産油国は、財政破綻も心配されるが、大産油国であるロシアの経済にも影響が出る。原油の下落はソ連邦の崩壊にもつながった要因となっている。過去の原油価格の急落は1986年、98年(メジャーの合併)、08年の3回あった。81年には原油の先物市場が開設されおり、86年、98年は10ドル割れとなった。需要減少の中でOPECの増産による供給増となり、下落したが、その後は減産で対応した。3回目の08年は、先物市場での投機が過熱して乱高下となった。7月でWTIが145ドルと最高値を記録したが、9月のリーマンショックを機に急落、年末には40ドルとなった。今回の急落は、08年の乱高下に似ているとの見方もある。
今回は昨年6月には100ドル台の高止まりが続いたが、その後は急落、11月27日のOPEC総会で減産を見送りを決めたことから、年始で再下落して、50ドルを割って47~8ドルとなった。
08年の急騰、急落の乱高下は、先物市場によって引起こされた。今回はシェールオイルの増産に対してOPECが生産を継続する方針を決めて対応しており、需給バランスの崩れが要因となっている。次期OPEC総会の6月5日まで調整は時間がかかるとの見方もある。OPECかシェールオイルのどちらが減産するかの我慢比べとなり、反発する目途は立っていない。
シェールオイルは、コストの回収を急いでおり、損益分岐点の限界生産を続けており、破綻も心配されるが増産で対応させているため供給増が定着している。中東、北アフリカでの地政学的リスクが緩和されていることもあり下落に拍車がかかっている。今までは、供給増であったが、各地での紛争で原油価格は高止まりしていたが、イスラム武装勢力の拡大によるイラクの供給不安、イランの核問題などの地政学的リスクが指摘されても供給増から続落している。
原油価格はリーマンショック後はOPEOの減産、地政学的リスクによって80~90ドルに回復、11~13年は100ドル台で推移して、産油国も「意心地の良い相場」となった。以前は「80~90ドルを確保する」として財政の立直しを図っていたが、100ドルが財政健全化の目標となった。だが、40ドル台は半額の水準となるため、サウジ、UAE、クウェートなどは余裕があるが、他の産油国は厳しくなる。
国内の石油開発事業も増益となり好調で推移し、石油事業に赤字を補填してきたが、減益となる。新規の探鉱、開発計画を見直しとなる。一方、元売サイドは、原油価格の高止まりでコスト増となり、ユーザーへの転嫁が遅れで、業績は悪化したが、さらに在庫評価損が発生で赤字となる。