2015.08.27 のニュース
運輸燃料多様化に遅れるな
内需は、若者の車離れ、燃費の向上、高効率機器の普及、産業分野での燃料転換により、減少傾向が顕在化している。資源エネルギー庁の石油製品需要見通しでも、今後も当面5年間では年率平均1・4%程度、ガソリンでは1・8%程度の需要減少が見込まれている。
我が国の燃料の利用分野ごとにリスクを比較すると、95%以上を石油製品に依存している運輸部門のリスクが他の製造業や家庭部門などと比べて圧倒的に高くなっている。石油が引き続き重要なエネルギー源であり、2030年度のエネルギーミックスでも、石油は1次エネルギー供給の約3割に達し、最も大きな割合を占めるであろうことが見込まれ、石油の上流から下流に至るセキュリティの確保が我が国にとって最大の課題となる。
ただ、石油をはじめとした資源・エネルギーの大半を海外に依存し、地震など災害リスクの高い日本にとって、この偏在性の高さは決して好ましいこととは言えない。
一方、次世代自動車の普及状況をみると、HVの保有台数は380万台を超えたほか、14年度新車販売ランキングでもトヨタ自動車の小型HV・アクアが3年連続で首位を獲得。ベスト10は軽自動車を除くとすべてHVとなっている。EVは車種がまだまだ少なく顧客の選択の幅は狭いが、国内保有台数は4万台に達した。燃料電池車(FCV)も、トヨタが世界初の量産FCVとなる「MIRAI(ミライ)」を昨年12月に発売し、国も20年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、世界に「水素社会」をアピールしていくため、FCVの普及と水素ステーションの建設などインフラ整備に力を入れている。
HVなどへの対応については、各石油組合が研修会を主催するなど、従業員教育に積極的な動きをみせているが、EVやFCVについては、今後の普及動向に不透明感が漂うために、その対応については暗中模索の状況が続いている。
しかし、燃料多様化の動きや次世代自動車の普及に対して、現在のSS業界を見渡すと、数量と価格に翻弄され、日々過当競争に明け暮れ、将来の設備投資に備えたマージンの確保はおろか、生き残りさえ危ぶまれる状況が続いている。運輸部門の燃料多様化や次世代自動車の普及に後れを取ることなく、事業基盤の再構築を進めなければならない。