2015.08.28 のニュース
予想外の原油安で石油開発は苦境 需給緩和に株安が追い討ちで混迷
中国経済の減速、株価の下落を受けて、原油安、株安、ドル安(円高)となってきた。原油価格はWTIが40ドル/バーレルを割って24日には38ドルに下落、25日には39ドルへ反発したが、30ドル台の安値となっている。ドバイ、ブレントは40ドル台を維持しているが、42~3ドルに値下がりしている。加えて為替は円高に転じて118~9円/ドルとなっている。東商取の原油先物は3万6000円/キロリットルとなり前週に比べると2000円の値下がりとなっている。
株価も下落して日経平均も1万8000円割れとなり、景気回復に水を差すことが心配となってきた。今までの原油価格の下落は、米国のシェールオイルの増産とOPEC産油国の減産見送りなどによる石油需給緩和、供給増を背景にしていたが、今回は、世界同時の株安、ドル安が引き金となっており、経済情勢が急変している。
原油安は世界の石油需給の緩和で説明がついたが、今回は中国経済の減速が表面化したことになり、世界経済に与える影響は大きく、見通しを難しくしている。
それにしても原油が30ドル台に値下がりするとは、まったくの予想外れとなっており、元売サイドは、連続しての仕切価格値下がり、末端市況の先取り値下げで対応に苦慮しているが、石油開発業界、元売の石油開発部門は即減益となるため、混迷している。元売の場合は、原油価格の値下がり分を保留すれば利益は確保できるが、石油開発は、原油下落が即減益にはね返るため、打つ手がない。合理化、節約で支出を抑えるか、投資計画の見直しなどで対応、値上がりを待つことになる。
原油価格は2011年3月ごろから100ドル時代(一時は110ドル超えも)が3年半も続き、業績が好調であったが、14年の9月以降、急落して15年1月には40ドル台にまで値下がりした。その後、値上がりして60ドル台に回復したが、再度、急落して今年1月の底値に戻ったことになる。
原油価格が100ドルを超え、為替も100円/ドル台で推移したため、原油CIF価格も14年1月には7万5000円/キロリットルであったが、今年1月には3万6000円まで下落、6~7月には4万9000円に戻しているが、今後は値下がりする。
足元の原油価格はWTIが急落しているが、指標となるドバイ、ブレントは値下がり幅が少ない。それでもWTIに連動して値下がりしている。WTIは米国の原油市況であるため、日本の原油の取引相場には連動しないが、30~40ドル相場となれば、石油開発業では採算が合わない。コスト面からみれば、古い中東の巨大油田は、投資の償却が終わり30ドルでも採算が合うが、比較的新しい油田は60ドルが採算点とみられるとおり、生産が難しくなる。シェールオイルも50~60ドルが限界点とみられたが、投資の回収を急ぐため、50ドルでも生産が続いている。その意味では競争力があり、減産方向にあるが、生産が続いている。
ここまで下落すれば、新規の投資は見送りとなり、開発計画の見直し、生産中のプロジェクトもコスト割れとなり、生産停止に追い込まれ、生産リグの稼働は減少している。
今までは米国のシェールオイルとOPEC産油国との我慢比べが指摘されていたが、どちらも限界となり、値上げを求める声が出ている。どちらが生産調整に取り組むのか、見通しは不透明である。値上がりの材料はなく、チャートからは底値までいかないと反発しないとのあきらめムードも出ている。その底値は、どの水準かが分からないが、原油相場の見通しの難しいところである。
消費国も、値下がりは歓迎するが、値上がりに転じれば大幅となり、経済が混乱するため、下げ過ぎを警戒
している。