日刊ニュース

2016.06.16 のニュース

SS網「維持・強化」の原点

4月16日午前1時25分本震、全域が同時に停電に陥った阿蘇市。そんな中で、地場の中核SSが午前2時30分に自家発電を稼働させ、給油可能となった。他のSSがほとんど稼働を停止する中、「ポスと計量機のみで照明等はない」環境下で、中核SSのスタッフの丸10日間に及んだ長い戦いが始まった。
 警察と消防、市役所などの緊急車両への給油を優先しつつ、一般のお客様には限定給油をお願いした。重要施設の自家発向けの燃料配達の要請が続々と舞い込んだ。在庫量がどんどん目減りしていく。一般客には制限給油をお願いし、ローリーの到着を待つ。しかし供給に遅れが生じ、翌17日午後に一般客への給油を中断する苦渋の決断。同日深夜からは電力会社からの要請に沿った発電車両向け軽油配達も始まった。
 18日午後にローリーが到着、一般客への限定給油を再開、夕刻からは満タン給油を行えるようになった。そして午後6時に停電解消。その後も「緊急車両への店頭給油は深夜0時まで、発電車への軽油配達は午前2時まで行ってSS内で仮眠。5時半から軽油配達の準備を行い6時に配達出発。7時にSSを開店」という営業状態が、電力が完全回復する25日まで続いた。
 「スタッフ自身が被災者でありながら、家族や家を差し置いて、災害業務に専念しました。1日も早く電気を通すため、車中泊のお客様のため、いま自分たちにできることを冷静に考え、精一杯やりました」。これが、地域を慈しみ愛する「地場の経営者とスタッフ」、地域への燃料供給に誇りと責任感を有する「地場の石油販売業者」の底力だ。
 阪神淡路大震災の1995年にピークの6万ヵ所超が存在したSS。東日本大震災の2011年に3万8千ヵ所あったSSは「最後の砦」と再評価された。ピーク比で半減した現在のSSは、政府骨太方針で「維持・強化」が明記される。ただし地場SSの経営の現実は、極めて厳しい日常の連続だ。
 例えば今後も、こんな想定もありうる。
 あれだけ感謝された警察、消防、市役所、電力会社は競争入札で元売子会社と商社が落札。熊本空港近くにコストコがSS併設店を新設、地域最安値を社是とする地場PBと激安合戦に入り、阿蘇の地場SSの仕入れを下回る小売価格競争が頻発…。こうした市場を制御する仕組みがない「方針」で、地場SSを「維持・強化」する絵柄は画餅でしかない。

提供元:全国石油商業組合連合会
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