日刊ニュース

2010.07.09 のニュース

設備処理 法的措置で実施 -重質油分解装置装備率の向上で誘導-

経産省は5日付けの官報で、エネルギー供給高度化法に基づく重質油分解装置の装備率を現状の10%から13%に引き上げることを狙った省令を施行した。原油の重質油化、石油需要の白油化、国内需要の減少に対応して、重質油分解装置の能力の向上を図ることになったものである。企業側は2O13年度までに装備率を何%に引き上げるかの目標を今年10月末までに経産省に提示することになった。
 精製企業には装備率を引き上げるか、それとも設備自体を処理するかの選択を求めているものであり、結果的には設備処理を法律で推進することになる。自由化された時代に設備処理を法律で実施するのは問題であるとの見方もあるが、各社とも経度省と調整しながら進めることになる。ペナルティーとしては公表、勧告が設けられているため、法律順守の立場もあり反対することは難しい。
 この装備率を13%に引き上げるという「判断基準」は、すでに公表されており、事前に石油各社との調整は行なわれている。施行を機に省令で重質油分解装置の定義、装備率、改善率の算定法を示し、法律で実施されることになった。また、重質油分解装置の定義にRFCC(二段再生塔または触媒クーラーを有するもの)を対象にしているが、FCCは対象外としている。FCCでも白油化に対応できる装置として導入しているものであり、これをカウントしないことは不当であるとの意見も出ているが、今回の決定ではFCCを対象外とした。白油化への対応であれば、軽質原油の輸入によって対応していることを指摘しているが、FCCは除かれている。
 各社とも、すでに対応を検討しているが、この13%基準を現状でクリアーできないのは、コスモ、東燃ゼネラルの2社とされており、その対応が注目されている。両社とも重質油分解装置は保有しているが、コスモは4月に堺で2.5万バーレル/日が完成している。
 法律の目的は重油分解装置の導入、増強だが、現在の原油価格における重・軽質(AHとAL)の価格差は3ドル程度と以前に比べ縮小されており導入のメリットは無く、また、新設することは難しい。原油価格が100ドルを超えた時期には大幅な価格差が発生して、重質油分解装置を保有した会社は利益を計上したが、最近では稼動しても利益が出ず、マイナスという状況に急変している。
 装備率はトッパーの処理能力を分母に、重質油分解装置の処理能力を分子にし、これを13%程度に引き上げるものである。重質油分解装置を増強するか、さもなければトッパーを削減するかの選択を求めている。現状では重質油分解装置を導入することは考えられず、トッパーを削減することになる。
 各社の削減計画を見ると、JXはすでに今年度末までに40万バーレル/日の削減を決めており、追加で20万バーレル/日を2013年度末までに削減する。出光も3製油所の各1カ月操業停止、追加で10万バーレル/日を削減する。コスモも能力では8万バーレル/日を削減、その後は中期計画の中で検討する。昭和シェルは、京浜・扇町12万バーレル/日の廃棄を決めている。このように各社は削減する計画を発表しているが、東燃ゼネラルは、今のところ削減計画を発表していない。

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