日刊ニュース

2011.04.18 のニュース

地場の誇り、底力生んだ協調

リアルな大震災の話を聞く機会があった。
 街道に沿って町が形成され、その市街地を迂回するようにバイパスが敷設された。地場SSが旧道に残され、敷地の広い県外資本のSS、子会社SSがパイパスに進出し、その多くはセルフに転換された。東北の太平洋沿岸の市街地の多くが大津皮にさらわれ、地場SSの多くが致命傷を負った。高台のバイパス沿線のSSはほぼ無傷。そんな光景が各地で見られた。
 大切な馴染みのお客様に頭を下げて給油できない旨を伝える一方で、自治体対策本部からの緊急要請に全燃料を振り向け、稼働可能な経営資源を全投入して、力を尽くしたのは地場のSS。通信が途絶えた中で、そうしたSSの経営者やスタッフが、自らも被災者であるにもかかわらず、昼夜を厭わず、体力の限界まで手回し給油を行い、暗闇の中を、寸断された被災地内を縦横に配達に飛び回った。故郷の隅々まで土地勘があり、機転の利く地場SSの人材ならではのことと思う。
 「家族を失ったが、まだ行方不明のスタッフがいる。見つかるまでは家族の葬儀はできない」。そんなSSが、POSデータを失い、売掛金伝票を失い、多くの掛売客を失った。
 漁船向けにA重油を商っていたが、湾内の地上タンクを流され、バージを失った我々の仲間がいる。世界有数の漁場を目前にした三陸の漁港は過去、幾度も津波に洗われた経験を有するが、今回のそれは度を越している。「津波に被災してすベてを失うリスクを負いながら、再びこんなに利の薄い商いを復活させる意味があるのだろうか」。湾内に蓄積していた汚泥をも、陸上へ浚っていった大津波。瓦礫と汚泥にまみれた陸上とは対照的に、とてつもなく澄みきった海があるという。
 自衛隊、米軍、そして海外から均支援隊の統率力と実行力は素晴らしいものがあった。驚異的ともいえる元売の努力が加わって、病院にも火葬場にも、エネルギーが満ちていった。石油産業の持っている底力が発揮され、誇らしい気持ちがした。
 我々も元売も、底力を発揮して、地場の仲間が事業を通じて故郷の復興に取り組める基盤を支えたい。まずは、薄利に甘んじた状況から脱して、「素晴らしい石油」を、より採算性のよい事業に回復させたい。平時においても、濁った競争より、澄んだ協調が満ちた産業でありたい。

提供元:全国石油商業組合連合会
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-17-14石油会館
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