2011.05.20 のニュース
電力用C重油確保で増産対応 -製品供給増に追い打ちかける心配―
石油製品の供給増で市況は下落傾向を強めているが、東電の福島原発事故による石油火力へのシフトでC重油が増産されて原油処理がアップするため、製品需給のバランスが崩れ、供給増に追い打ちがかかるとの心配が強まっている。
東日本大震災直後、経産省は石油各社に対して製油所のフル稼働、製品輸出の停止を要請した。その時点でも、少しの時間経過で石油製品が供給増となり需給緩和となることが心配されていたが、予想通りの状況となってきた。震災直後はガソリン、軽油などが供給不足になり、SS店頭にユーザーが殺到してパニック状態となり各社が増産で対応した。
供給不足の要因は、ローリー不足、油槽所の操業停止など物流に問題があったが、製品そのものは確保されていた。そのため、復旧が進むと販売数量の減少が顕著となり、逆に供給増となってきたもの。緊急事態に安定供給を優先して各社が増産対応するのは当然のことであるが、経産省の増産要請のツケが石油業界に回ってきたといえる。
加えて、原発事故による石油火力へのシフトでC重油の供給増が求められ、その結果、製品需給バランスが崩れることが心配されている。電力用C重油の供給増自体は特需として歓迎されるものの、そのために原油処理をアップするとガソリン、中間留分か供給増となり、石油製品市況が下落することになる。
過去にも柏崎刈羽原発の事故での経験がある。電力用C重油の供給増に対しては各社間で温度差があり、受け止め方はまちまちだが、石油業界全体から見ると需給バランスが崩
れ、市況が下落するためマイナス面が大きい。
東電向けC重油は、原油価格、諸経費を加算した価格フォーミュラで値決めされるためマージンは確保される。一般工業用のC重油は原油価格よりも安く、採算割れの製品であるのに比べると、その意味では採算に乗る製品であり利益が見込まれる。東電向けC重油の販売は利益が確保されるだけでなく、数量も大量であり、メリットは大きい。そのため、元売内部でもC重油を取扱う産業エネルギー部などは歓迎している。粕製会社も稼動率がアップするのと、C重油の増販で利益が見込まれる。だがその反面、リテール部門では需給バランスの崩れで製品市況が下落することで赤字になることを心配している。このように元売全体としてみると悩ましい問題となる。
平成22年度の元売の決算は石油製品のマージンが確保され、各社は増益となっているが、過去2年間は石油製品の供給増で市況が下落し、マージンの確保ができず実質赤字であった。それだけに需給バランスの崩れが心配されている。23年度の見通しは、販売減と需給の緩和でマージンは減少するとみているが、それでも適正水準を確保して前年並みの利益を見込んでいる。原油価格が前年の平均に比べて上昇、石油開発、石油化学で増益を見込んでいる。
しかし、足元の供給増と、これにC重油の増産による供給増が加わると、一気に需給バランスが崩れることになる。これから製油所が定期修理に入るため、需給は調整されるが、夏場にかけて石油火力が立ち上がるためC重油が増販となり、需給調整が難しくなる。