日刊ニュース

2011.06.17 のニュース

石油火力の位置づけを検討 ―緊急時に備え平時の石油シェアを確保―

 東日本大震災による福島原発事故で、電力用C重油の増販を期待したが、今のところ予想外れとなっている。原発から即石油火力にシフトするのではなく、まず、コストの安いLNG、石炭にシフト、最後に石油でカバーするという順となっているためである。だが、これを機に石油火力による電源確保のあり方を再度、検討すべきである。
 現在、石油火力は災害で操業を停止したのと、脱石油政策ですでに操業を停止したものもあり、稼動するには点検作業の必要から時間がかかるため、本格的に立ち上がるのは7月以降となる。
 電源構成からみると石油は7%であり、原子力、LNGが各29%であるのに対して、あまりにもシェアが少ない。石油のシェアの7%を一気に増加させることは難しく限界もある。石油火力が立ち上がっても、重油専用の内航タンカーはすでに廃船のため不足するなど、輸送面でも問題が生じている。石油火力は新設されることがなく、あくまでもバッファーとなっており、発電量が大幅に増加することはない。
 原発の不足分をカバーするのはLNG、石炭となる。太陽光発電の導入促進が盛んに議論されているが、これらの新エネルギーは僅か1%であり、これが原発に代わることは不可能である。菅首相の「1000万戸に太陽光発電を設置する」との発言もコストを無視したもので、実現不可能な思いつきであるとの批判が出ている。
 首相発言は太陽光発電の促進に寄与するとしても、あくまでも対象は家庭用電力であり、工場の電力をカバーできるものではない。世界で原発反対の運動が盛り上がっているが、日本のように電力消費の多い工業国では、簡単に原発を中止することはできず、当面は電源構成を変えながら電力の供給を確保することになる。エネルギー基本計画の見直しで石油火力を完全復活することになれば話は別であるが、石油火力の扱いも問題にすべきである。
 大震災を機に石油の重要性は認識され、サプライチェーンの維持が求められているが、石油の安定供給、石油火力のあり方も検討すべきである。困った時の石油頼りとなるが、これを機に平時から緊急時に備えての供給体制を検討することになる。
 4月の電力10社のC重油の受入は50.5万KLで前年同月の32.3万KLに比べて57%増となった。原油の生だきは44.9万KLで57%増となった。石炭は348万トンで10%減、LNGは366トンで9.3%の増となった。
 5月のC重油受入は524KLで28%増、原油は50万KLで98%増となり、増加は大幅であるが、実数ではそれほどでなく、前年が少ないためである。ちなみに前年は重油は41万KL、原油は26万KLとなっている。
 このように重油、原油の受入は前年に比べれば増加となっており、東電向けは増加していることになる。石油火力の本格稼動はこれからであり、実際のオーダーが出るのはこれからとなる。そのためC重油の増産で原油処理をアップするとガソリン、中間留分が供給増となり、需給の崩れから市況の下落が心配となる。ただ、今のところは減産対応で需給は安定して推移している。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE