日刊ニュース

2011.07.01 のニュース

備蓄放出でWTIが急落 ―指標として採用することは問題に―

 IEAが石油備蓄の放出を決定したのを機に、WTIは95ドル/バーレルから90ドル(28日には92ドル台の反発)へと急落してきた。またブレント、中東産も100ドル台へと下落してきた。WTIが備蓄の放出に直ちに反応して下落したことになる。IEA加盟の消費国が協調行動をとったことになるが、その背景はアメリカの景気後退の懸念から、原油価格の値下げを狙ったものとみられる。6月のOPEC総会で、原油価格の抑制を狙いサウジが増産を要謂したが、他産油国の反対で見送りとなったこともあり、その対抗手段として、備蓄の放出となったもの。今のところシナリオ通り効果が発揮され原油価格は下落したが、逆に値上がりすることになると、今後の原油価格にも大きく影響するため、IEAとしても難しい決断となった。
 この備蓄の放出が供給途絶という緊急時でなく、原油価格の高騰を抑える目的で実施されたことには、問題視する見方もある。前回は、アメリカのハリケーンが襲来した時に発動されが、その時期とは状況が違う。
 まず、WTIが急落したが、その後の他の原油価格の値動きが注目される。原油価格の指標であったWTIの値動きが、北海のブレントと中東産のドバイに比べるといびつな動きをしており、指標として通用しなくなっている。
 今年の2月ごろからブレントはエジプト、リビア、中東情勢の不安から値上がりした。一方、WTIはアメリカの景気後退で石油需要の減少、原油、製品在庫の増加で逆に下落した。また、WTIのターミナルであるオクラハマ州クッシングの原油在庫が増加したことで急落したこともあり、ブレントとの価格差は15~20ドルと拡大した。本来はWTIが高値であり、ブレント、ドバイが安値で推移していたものが、逆転して、その価格差が拡大した。
 天坊石油連盟会長は「WTIはアメリカの国内の特殊な事情を反映したローカルな原油となっている。取引きの指標として採用するには問題がある。ドバイ、ブレントの方が、指標としては正しいのではないか」と述べている。
 このようにWTIは、アメリカ国内の需給、経済情勢に反応した値動きをするため、世界の原油情勢から乖離したかたちでいる。マスコミは原油相場をWTI中心で伝えているため、国内の販売業者が、WTIの動きを先取りして市況対策を打ち出すと、見通しを誤り混乱するケースも出ている。
 日本の輸入原油の大半は中東原油であり、ドバイ、オマーンのスポット価格に連動する。最近の原油価格の動きをみても、WTIは下落しているが、ドバイは値下がりしていないケースも多く、仕切価格は値下がりを見込んだが、逆に値上がりか、据え置きとなっている。しかし、WTIの値動きを先取りしてガソリン価格などを値下げすると、販売業者は逆ザヤとなり赤字となる。
 そのため販売業者はWTIの値動きをみるのではなく、ドバイ、ブレントの値動きをみて、市況対策に対応しないと失敗する。6月の市況対策は、ようやく軌道に乗ったところであり、ここにきてWTIが急落し、対応が難しい状況となってきた。当面は市況維持で対応するが、原油価格の下落が続く混乱も予想される。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE