日刊ニュース

2011.07.05 のニュース

10円と80万円のエネルギー

 電力使用制限令が1日から東京、東北電力管内で発動され、電気事業法に基づき、契約電力500キロワット以上の大口需要家に対して、昨夏比15%削減を義務付けるもので、政府は併せて、中小企業や一般家庭にも15%節電を呼びかけており、東日本での「節電の夏」が始まった。石油は、重油が両電力向けのピーク時供給能力を引き上げる火力発電向けに活躍するとともに、自家発電向けにも重油や軽油が仕向けられる。
 これらの製品をきちんと供給する。この責務に応えるためには、備えが必要で、場合によっては、自らの経営資源を毀損させることとなる。重油や中間3品見合いで原油を処理すると、元売にも、SSにも、最大の油種であり、最大の収益源であるガソリンを傷つけることとなる。しかも、それは緊急事態の今年度のみの対応に終わる可能性がある。
 再生可能エネルギーが、殊のほかお気に入りの現政府は、太陽光など自然エネルギー導入を早急に果たす意向を示している。事ここに及んでも、いまを支える化石エネルギーをさらなるリスクにさらし、現状は高値・不安定型でしかない再生可能エネルギーの肥やしにしようとしているように見えてしまう。
 石油が不足して電力供給がショートした場合、元売を筆頭に石油は非難されるのだろう。新潟の原発停止の際に、まだ国威を備えていた電力会社は、それを至極当たり前のように捉えていた。ところが、最大の経営資源であるガソリンを毀損し、系列SSを弱らせる供給過剰が出現するリスクを我々が訴えてきたが、それに対する行政なり政治のメッセージは皆無なまま、電力使用制限令が発令された。これによって生じるリスタは、民間企業である元売とSSで被れ、という構図である。
 この夏以降、ブレークしそうな事業の一つに家庭向け蓄電池ビジネスがあるのだという。いち早く商品化された家庭向け蓄電池ラインアップを見てみると、標準世帯向け1キロワット時タイプが約80万円、2.5キロワット時タイプは180万円。電力1キロワット時は3.6メガジュールという。灯油1Lは35.8メガジュールだそうだ。灯油0.1Lに相当するエネルギーを蓄える蓄電池に80万円を投入するエネルギーの姿もあるが、常温液体でエネルギー密度が高く10円に満たない安価なエネルギーとしての石油の姿もある。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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