日刊ニュース

2011.07.20 のニュース

脱原発も石油の復活は難しい ―石油は割高でシフトは少ない―

 東電・相島原発の事故を機に、代替電力エネルギーとして石油、LNG(天然ガス)、石炭へとシフトされているが、石油(C重油)は価格がLNG、石炭に比べて割高であるため、それほど増加していない。
 電源構成からみると原発、LNGが各30%、石炭が25%、水力が8%、石油は7%と一番少ない。新エネルギー(太陽光、地熱、風力)は1%となっている。
 1950年は石油が45%でトップを占めていたが、これに比べると雲泥の差である。石油危機で原油価格が高騰すると即電力料金の値上げに反映されたため、脱石油政策がとられ、石油は7%に減少した。脱石油政策は原発を推進したが、同時にLNGの導入が活発化、世界各地で開発が進み、大型プラントも完成、天然ガス時代を迎えた。今回の東日本大震災の影響で天然ガスの需給が絡まることになったが、産ガス国からは日本への安定供給を保証すると伝えられていることから、今後、LNGは増加するものとみられる。
 石炭は、コストが安いこともあり、急速に増加した。最後に石炭が石油のシェアを奪ったことになる。同じ火力発電であり、CO2対策からみると石炭の方が不利であるが、コスト面からみると石油の方が割高となる。脱石油政策から石油火力の新増設が停止となり、今回のエネルギーシフトも石炭への依存を増加させているため、石油の受入、消費が減少して今日に及んでいる。
 菅首相が脱原発を推進、原発分をカバーするのは、再生可能エネルギーとしているが、これらは現状で1%のシェアにすぎない。新エネルギーを導入することには反対しないが、そのコストを誰が負担するのか、いつまでに達成できるのか、工程を議論せず、思いつき発言であるとの批判が与党からも出ている。
 だからと言って、他燃料に比べて割高となっている石油火力が復活することは、難しいようである。
 東電向けの4~6月分の価格にっいては7万4540円/KLを打ち出している。前期比で1万2410円の大幅な値上げとなっており、7万円台の高値である。値決めは原発
事故との関係もあり接衝中であるが未定である。一方、HSC重油は6万3950円で決定しており、原油高を反映している。
 大口のC重油価格のフォーミュラは、原油価格、為替、国際価格、ボンドバンカーなどと諸経貿を加算し た、原価計算によるものである。コスト保証方式であり、それだけに石油業界が安定供給を約束している。燃料油の値決め方式である市場連動制とは違っている。
 ただ、LSC重油の4~6月の打ち出し価格は、原油価格の値上がりを受けて高値となっている。コストは3~5月を対象としているため原油価格CIF価格(南方物)が125ドル/バーレルと前期に比べると25ドルと急騰している。原油価格は08年の急騰時と同じ流れにあり、足下の南方物は120ドル、WTIは95~98ドル/バーレルで推移している。
 このように原油価格は依然として高値であり、LNG、石炭の価格も原油価格に連動しているが原油価格よりも割安に設定されている。
 東電もLSC重油、生だき用原油の輸入で対応しており、国産によるC重油の供給はこれからだが、C重油は割高であるため敬遠されている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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