日刊ニュース

2011.08.15 のニュース

WTI急落も中東産の下げは小幅 ―仕切価格の改定も遅れて実施―

 原油価格(WTI)は、9日には急落して80ドル/バーレルを割り込んで79.30ドルとなったが、10日には反発して82.89ドルと3.59ドルの値上がりとなった。7月末が99ドルであったため、8月に入りで、一気に20ドルの急落となった。アメリカ国債の格付け引き下げによる財政不安、株安、ドル安に連動して原油価格も急落したもの。10日に反発したが、下げ過ぎとみての一時的な反発なのか、もう少し様子をみないとはっきりしない。
 WTIは6月初め100ドル台で推移しており、原油高が消費国では問題となった。アメリカはガソリンの高騰が消費者物価を押し上げ、景気後退が懸念されるため、原油価格の引き下げを狙ってサウジなどの産油国に増産を要請した。しかし、6月8日のOPEC総会ではサウジは増産に賛成したが、他の産油国が反対したため、増産が見送りとなり、WTIは100ドル台で推移した。この増産反対に対抗してIEAが在庫取り崩しを決めて対抗したが、一時期は下落したものの再度、値上がりしたため、効果が上がらず批判が出た。供給途絶という緊急時での在庫取り崩しではなく、平時で高値を押さえる目的での在庫の放出は難しいことを実証したことになる。原油価格を意図的にコントロールすることはできず、経済原則に委ねることしか方策はない。
 だが、ここにきて欧米の財政不安が表面化することで、急落することになってきた。当面は「WTIが95~100ドルで推移する」との予測も外れそうである。
 ブレント、中東産は100ドル台で推移しているが、北アフリカ、中東情勢が不安であり、リビアの減産(輸出先は85%が欧州)、エジプトなどの政情不安が中東に拡大すると、供給不安から原油価格は急騰することも予測される。
 WTIの急落に連動してブレントも10ドル程度は値下がりしているが、その価格差が20~25ドルもあり、異常な状況にある。すでにWTIは、原油価格の指標としての役割を果たしていないとの見方も定着している。WTIは世界の原油市場からみると蚊帳の外となり、アメリカ国内の指標となっている。
 WTIは、以前は世界の指標として活用されていたが、日本の輸入原油の大半が中東産であるため、ドバイ・オマーンの原油価格に連動している。そのため、WTIの値動きとは連動しないことを販売業者も注意すべきである。まだ、原油価格はWTIが指標となり、その値動きが伝えられているが、WTIに比べると中東産は、大幅に高値であり、値下がりしていない。
 そのため元売の仕切価格の値下げも遅れている。業転市況も値下がりしているが小幅である。
 販売業者からは、①原油価格(WTI)の下落に対して仕切価格は値下がりしていない、②市場連動制であるが、新・仕切価格に移行したのを機に仕切価格の打ち出し(改定通
告)が不透明となった、③市場連動制といっても、従来の業転市況リンクから、原油価格、内外の市況、ブランド料などのコストを総合に加味しているため、中味が分らない、との声が出ている。
 最近のガソリンの仕切価格改定も6日からは小幅(70銭/L)の値下げとなったが、13日からは大幅値下げとなる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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