2011.08.24 のニュース
大手業者、灯油在庫を積み増しへ ―元売も早めに対応、灯油初戦は見通し難―
商社、大手販売業者による灯油の在庫積み増しが、これから本格化する。元売は東日本大震災後の東北地方への安定供給を優先して早め在庫を積み増ししており、前年に比べて在庫は大幅に増加している。今年の7月末は260万KLで昨年に比べ70万KL増となっている。
昨年は8月末在庫が230万KL(前年が296万KL)、9月末が269万KL(313万KL)と、低在庫が心配されたが、販売数量の減少、コスト削減を理由に在庫を抑え
て灯油商戦に臨み、うまく乗り切った。今冬も販売減が続くとの見方が強く、低在庫で対応することが予想されたが、震災の影響で状況が大きく変わった。製油所の操業停止が続
いていることもあり、安定供給の立場から早め在庫の秘み増しとなり、前年に比べ70万KLの増加となっている。
灯油販売は、天候次第で大きく変わるため予測は難しいが、震災の影響で電気・ガスの燃料転換が止まり、代わって灯油ストーブが売れているとの見方もある。だが、増販となるのか否かは、寒さ次第となる。平年並みの気温であれば増販は見込めないとの見方もあり、景気回復が遅れているため業務用は全国的にみれば減販となりそうである。
元売の在庫増は、安定供給を優先しているためで、仮に暖冬になれば減産、輸出増で対応して需給を調整することになる。
灯油在庫の積み増しは、夏場の安値物を手当して、冬場の値上がりを見込み、利益の確保を目論んでいる。
灯油相場は、東工取の先物市況でも9月限は60円/Lであるが、12月限は64円と先高となっている。足下は「ガソリン高(66円)の灯油安(60円)」の価格体系であるが、11月頃になると、「灯油高のガソリン安」に逆転するのが例年のパターンとなっている。灯油は今が安値であり、ここで在庫を積み上げて、需要期の冬場で値上がりすれば、在庫を積み上げても、タンクの保管料、金利などコスト増も回収ができ、さらに利益が見込めるとの読みが前提となっている。
この見通しは原油価格が今後値上がり、灯油の市況が値上がりすることを想定しているが、逆に冬場に原油価格が下落して、灯油相場が下落すると大損することになるため、灯
油商戦はリスクを伴う。
そのため灯油商戦も前半の12月末が、最初の勝負時となり、大手販売業者は市況、販売動向、在庫数量をみて、早めに売りに出るなど動きをみせる。また12月末は我慢して持ちこたえ、1~3月で勝負を賭けるなど各社の思惑が絡み、いつ売りに出るのかの判断は難しい。売るタイミングを失うと高値在庫を持ちすぎて赤字となるなど明暗を分けることになる。シーズンが終わると灯油販売は一気に減少するため、いつ在庫を払い出すかがポイントとなる。最近は3~4月も冷え込み、シーズン終了時に値上がりするケースもあるため、最後の在庫調整が難しい。
一般のSS業者は、その時期の仕切価格をみて元売から仕入れ、マージンを加算して販売することになるので、在庫を持ち過ぎて大きく損失することはない。だが、暖冬で販売
減となり安値販売となると低マージンとなり、骨折り損のくたびれ儲けとなる。