日刊ニュース

2011.09.08 のニュース

石油需要の増加は見込めず ―原発見直し、サプライチェーン強化―

 野田内閣が発足して、鉢呂経済産業大臣が就任、ようやくエネルギー基本計画の見直し作業に取り組むことになった。経産省では9月末には総合エネルギー調套巷開催して、2030年に向けた長期エネルギー見通しの改定、原発政策の見直しを検討、年末までに中間とりまとめを行なう。
 原発政策の見直しに関しては、原発が減少することで電力の電源構成が議論となるが、石油の需要増は望めない。緊急時の対応で石油の役割は評価され、サプライチェーンの維持・強化としては製品の国家備蓄の積み増しなどの支援策が打ち出されるが、石油需要の増加というシナリオはない。
 原発政策は、新増設を認めず、現在稼働中の原発の扱いとなるが、ゼロにする「脱・原発」から「縮・原発」とする方向となっている。老朽化して廃止する際には新しい基準を設けることになる。当面は定期点検中の原発の再稼働を認めるか否かとなるが、地方自治体が再稼働を認めないとすると来年5月には全ての原発が停止することになり、電力の供給不足が問題となる。
 電力構成に占める原発のシェアは30%であり、これをLNG、石炭、石油の化石燃料での火力発電でカバーすることになるが、仮にカバーすると燃料コストは3兆円以上の増加という試算になり、すでに電力料金を15%アップする案も出ている。
 コスト面よりも電力不足が問題となり、今年の夏は節電対策で乗り切ったが、早ぐも冬場の需要期対策が懸念されている。点検中の原発が再稼働しなければ、電力不足となり、同じことが来年の夏場にも堅め安心することはできない。
 長期エネルギー見通しは、原発のシェアが減少して、これに代わってLNG、石炭、石油が増加することになる。再生エネルギーの太陽光発電が注目され、明日にも原発に代わ
って電源の主力となるように伝えられているが、数量が少なく、ベース電力にはなり得ない。電源としては1%であり、30%の原発をカバーすることは不可能である。
 長期エネルギー政策の議論は、原発問題となり縮小の方向にあるが、原発をカバーするのはLNGと石炭であり石油とはならない。電源構成の議論となるが、石油は発電コスト
が一番高いことと、原油価格の変動が激しく、電力業界の「脱石油」政策に取り込まれ、電源構成では6%と水力よりも低いシェアとなっている。
 現在も石油火力の新設を認めていないこともあり、今回の福島原発の事故に際しても、休止中のものを立ち上げることで対応している。電力用C重油の受入は前年に比べると、大幅な増加となっているが、ベースとしては大幅に減少している。電力側も原油、重油の輸入増で対応している。
 石油業界も、すでに重油の内航タンカーを廃船しており、精製設備も重質油分解装置を導入してC重油の生産を抑えている。経産省の方針も供給高度化法で、重油の生産を抑え、白油化を進めることで過剰設備を処理することにしている。
 電力業界に対しては「原発事故で困った時のみ石油に頼ることなく平時から一定の数量を引き取る」ことを要望しているが実現していないのが実態である。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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