2011.09.09 のニュース
東北地方の灯油確保を優先 ―各社、油槽所の在庫積み増しへ―
元売各社は、今冬の東北地方の灯油の供給確保を優先して在庫の積み増しを行なっている。北海道、東北など寒冷地の油槽所のタンクに灯油を供給しており、例年に比べて早めの対応となっている。とくに、東日本大震災の被災地である東北地方については、灯油の確保は社会的な責務の立場から増産し、油槽所へ輸送して在庫を積み増ししている。
そのため石油連盟週報(9月3日)の灯油在庫は307万KLで、前週の横ばい、昨年に比べると約80万KLも多い。昨年の在庫は低水準で推移し300万KLを超えることはなかったが、今年は8月末で300万KLを超えている。昨年は、最低の水準であったため、シーズン終了時には供給不足となったが、一昨年ベースの在庫に戻ったことになる。
だが、今年は、東日本大震災の影響で、現在もJX・仙台、コスモ・千葉の2製油肋が操業を停止しており、全体でみても供給は不足している。とくに東北地方唯一の仙台が停
止しているため、ジョイントもできず、関東や西日本からの供給となるため、ローリー、内航タンカーを手当しての輸送となる。そのため輸送距離も長くなりコストの増加となっている。
さらに、震災で東北地方の灯油タンク、ローリーが被害を受けており、ローリー不足など供給体制が弱体化しているため、配送面でも厳しい状況となっている。そのため各社ともローリーを確保するなど供給体制を整備している。
需要面では、被災地の避難所、仮設住宅の暖房には灯油ストーブが使用されるそうであり、灯油ストーブが売れていることから被災地の灯油需要は増加するとの見通しとなっている。とくに今冬は寒冷地である東北地方の灯油供給が重要となっている。被災地に限れば、万全な供給確保策が求められる。
震災直後は、ガソリン、軽油が供給不足となり、関東地区ではSSの休業が増加、営業しているSSにユーザーが殺到して混乱した。石油業界は直ちに供給確保に努め、短期間で供給不足を解消して信頼を得たが、今後は一般家庭の暖房燃料となる灯油であるため安定供給の確保には、より責任が重い。
供給不足となれば、社会問題となるため、各社とも在庫を積み増して対応している。灯油販売は天候に大きく影響するため、見通しは難しく、暖冬になると販売減となり、供給過剰になり、販売価格も急落するためリスクを伴う。
販売も全国的にみれば、電気・ガスヘの転換が進み、灯油需要は減少基調にある。電力不足、節電対策の推進からオール電化の流れは後退するが、だからといって灯油の暖房に
戻ることは難しい。すでに都心部の暖房は灯油を使用することはなく、電気・ガスに転換している。都心のSSでは、灯油販売を行なっているところは少ない。灯油を消費するの
は郊外地区と寒冷地区となっているため、需要は増加しないためである。これから灯油の需要を増やすには、灯油の給湯器などの販売を増加させることが必要となる。今までは気・
ガスの攻勢に押されていたが、挽回のチャンスとなってきた。
電気料金の値上がりや節電対策を機に灯油の暖房が増加するが、どの程度の増加となるのか見通しは難しい。