2011.10.12 のニュース
エネ基本計画、2つの機関で審議
エネルギー基本計画を見直しするため総合エネルギー調査会・基本問題委員会での審議が3日から始まった。同じく内閣府のエネルギー・環境会議も原発政策の見直しの検討を開始しており、原発のコスト試算をもとに、2ヵ月間でエネルギー(原発、再生可能エネルギー、石油、天然ガス、石炭など)のベストミックス、原発政策の選択肢などについて年末に中間報告をまとめる。2つの機関で同時に同じ問題を審議する異例の状況にあるが、双方の意見が調整できるのか疑問視されている。それだけ政治決着の色合いが強いことになる。
同じように温暖化対策問題は経産省と環境省が双方で審議したが、環境規制を強化して目標値を高くする環境省と、経済成長を維持しながら現実的な環境政策推進する経産省と
で意見が対立し、最後は政治決着することになった。結局、鳩山政権で温暖化対策法を国会に提出したが、一連の政治的混乱で未成立である。
今回は、事務局が経産省(エネ庁)と総理府(国家戦略室)での対応となるが、エネルギー・環境会議は、構成メンバーが主要閣僚となっており、極めて政治色が強いものとなっている。経産大臣も副議長として参画しているため、総合エネルギー調査会の意見は反映されるが、閣内の意見にまとまりやすい。
そのため総合エネ調とエネルギー・環境会議との意見調整がポイントとなるが、建前では常に意見交換するとしているが、どのように調整されるのかは審議が進まないとハツキリしない。
エネルギー基本計画を改定する基本計画法を所管するのは経産省であり、総合エネルギー調査会の意見を聞いて策定するので主導権は持っている。しかし、最終的には閣議決定
となるため政治判断が加味される。
一方、総合エネルギー調査会・基本問題検討委では、委員は25名と多数で、「原発推進」と「反原発」の委員がそれぞれ参画しており、意見が対立しているため調整は難しく、結局は両論併記となり後は政治決着も予想される。いずれにしても原発を推進するための基本法が一転して、削減させるために全面改正される皮肉な結果となる。これを機に、天坊・石油連盟会長も「石油は基幹エネルギーであり、災害を機に再評価もされた。石油の位置づけを向上した上で、石油の供給確保を優先すべきである」と要望している。
焦点となる原発政策はエネルギー・環境会議では、すでに先行して審議しており、基本理念には、①原発を2030年に電源構成で50%(09年は29%)としていた現行の計画をゼロベースで見直す、②安全性を高めて活用しながら依存度を低下させ、再生可能エネルギーの比率を高める、ことを決めている。現行計画(昨年6月に改定)では原発を14基新設する計画であったが、白紙で見直すことになる。さらに「反原発」と「原発推進」の対立プロセスは、議論を閉塞させ専門家の判断と国民世論との乖離を生み出しているが、これを乗り越えた国民的な議論を展開すべきとしている。
現在、稼働中の原発を、どこまで減らすのか、その方針(基準)をどう決めるのかは、今後の議論となる。廃止となれば、現地の雇用問題、財政問題にも発展する。