2011.10.17 のニュース
災害対応予算要求、拡充の意義
経済産業省資源エネルギー庁が先月末に財務省に提出した来年度予算概算要求の中に、地震など大規模災害時に石油製品の安定供給を確保する「緊急時に備えた石油製品流通網の維持・強化」事業の大幅拡充を盛り込んだ。今年度予算では2億円だったが、その事業拡充によって要求額は大幅増の56億円となった。この事業拡充は、東日本大震災での具体的な経験をもとに、緊急時に備えた石油製品の安定供給確保の重要性が強く認識されたからである。
しかし、もともと災害対応型SSの補助事業は、1995年1月の阪神大震災での教訓をもとにスタートしたものだ。電気やガスなどのライフラインがマヒする中で、堅牢な構
造のSSは損害が小さく、緊急車両への燃料供給や被災者の暖房用需要に応えるなど、エネルギー供給拠点として重要な役割を果たした。
エネ庁はこうした経験を踏まえて災害発生時に燃料需要が急増するとみられる人口密集地域のSSで、自家発電設備や貯水設備を設置する場合に助成措置を講じた。
同事業はその後、継続して実施されてきたが、皮肉なことに昨年5月に行われた経産省の行政事業レビュー、いわゆる省内事業仕分けで、民間の仕分け人から「なぜこの業界に
国が補助しなければならないのか」との指摘かあり、最終的に抜本的見直しが求められ、今年度から予算が大幅縮減されていたものだ。
もし、この仕分けが東日本大震災の後で行われていたら、はたしてそのような指摘が民間仕分け人のロから出ただろうか。電気、ガスなどのライフラインが切断され、公共交通
機関がストップする中、こうした補助を受けて自家発電設備を備えた災害対応型SSがすぐに立ち上がった。SSに長蛇の列ができたのも、災害時に最も重要になる物資が燃料
であるということを証明した。
民間の中小企業である石油販売業者か、緊急車両や病院などの緊急時重要施設や地域の人たちのために必死に燃料供給に取り組んだのは、自分たちが取り扱っている商品が、災
害時・緊急時ほど必要とされることを自覚しているからである。
今回の概算要求に盛り込んだ石油製品流通網の維持・強化の予算拡充は、こうした役割を果たすSSだからこそ、いま、国として支援しなければならないと、改めて表明したと
いうことでもある。