日刊ニュース

2011.10.21 のニュース

天然ガスシフトを重点策に ―ガス田買収、開発に大幅な予算を投入―

 石油鉱業連盟は、2011年版の「わが国石油・天然ガス開発の現状と課題」を発刊した。毎年発刊しているもので、データを基に開発企業の取り組みや、意義と重要性を訴えている。今回はとくに、原発事故か機に天然ガスの開発などに国の支援を要望している。
 最近の原油価格はWTIで80~90ドル/バーレルで推移しているが、ドバイ、ブレントは110ドル台と堅調に推移している。WTIに対してドバイは約20ドル、ブレントは25ドル高という体系が続いている。このような大幅な価格差が生じているため、WTIは世界の指標としての役割を果たさず、アメリカ国内の市況の目安という位置づけに代わってきた。
 開発原油の取引価格はドバイ、ブレントに連動しているため、100ドル超えの原油価格は、日本の開発企業にとっては追い風となっている。ただし、為替が76円/ドル(10年は86円/ドル)の円高で推移しているため円/KL換算では原油高が相殺されている。原油価格CIFでみると10年度の平均が4万5000円/KLであったが、今年5月に平均が6万794円の高値となっている。5月の原油CIFが119ドル/バーレルの高値、為替が81円/ドルとなっている。その後は、6月が5万8000円、7月が5万7000円、8月が5万6000円と値下がりしている。
 原油価格の先物でみると今年の4月平均はWTIが110ドル、ドバイが117ドルに急騰、一時は08年7月のWTIが145ドルとなった時期を彷彿させたが、その後は80~90ドルに下落している。しかし、ドバイ、ブレントの100ドル超え原油高に支えられており開発企業、元売の開発部門の業績は好調が予想されている。
 一方、石油開発をめぐる環境は、3月11日の東日本大震災による福島原発の事故を機に大きく変化してきた。原発政策が見直しとなり、エネルギー基本計画の見直しが総合エネルギー調査会で審議開始となった。原発は縮小の方向で、これに替わってLNG火力へのシフトが進むことになる。現に原発の事故を機にLNGの輸入が急増している。電力10社の受入は25~30%増となっており、石油(C重油、生だき用原油)も増加しているが、主に輸入で対応している。だが、石油火力は、新増設を認めず休止中のものを再稼動するのみで、石油の増加には限界がある。
 そのため、今後は天然ガスヘシフトしたエネルギー確保が重点策となってきた。経産省も来年度予算要求の目玉策とし「石油・天然ガス開発の戦略展開」をあげ、海外での石油・天然ガスの権益を確保するためリスクマネーの供給を拡充することになり、JOGMECの出資を約1000億円(今年度は85億円)へと大幅に拡大している。電力の安定供給と産業の競争力強化のため、天然ガスの探鉱、円高のメリットを生かしガス田の買収など3次補正予算、産業投資枠(新規)などで増額を要求している。
 天然ガスは、サハリン、インドネシア、カタールなどでの開発によるLNGの供給増とアメリカの輸入減、シェールの開発などから一時は需給緩和の見通しとなったが、福島原発の事故を機に世界のLNG需給に大きな変化を与えた。日本でも、天然ガスの供給確保のため、新規プロジェクトの開発に力を入れることになり、国の支援強化策を打ち出している。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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