2011.11.08 のニュース
「72時間の壁」に立ち向かう提言
「72時間の壁」という言葉がある。災害で倒壊した家屋などから人命を救助する場合、発生から72時間が経過すると脱水症状や低体温症などが原因で、生存率が急激に低下する。もちろん例外もあるが一般的にこう呼ばれている。
つまり災害発生時に最優先すべき人命救助のためには、この3日間が最も大事
な時間なのである。そのため救助作業のための緊急車両や病院などがフル稼働することになる。したがって災害発生初期には当然、緊急車両への給油や病院が備えている自家発電機への燃料供給が必要となる。この供給要請に応えることが、わが石油業界がまず第一に取り組むべき緊急時対応である。
東日本大震災では地震だけでなく巨大な津波で製油所や油槽所、そして多くのSSとタンクローリーが被災したが、被害を逃れた地場SSはまずこの3日間、情報拠点となった石油組合を中心に緊急車両や病院などを最優先に、手回し給油や組合員所有のタンクローリーによる搬送など、できる限りの方法で燃料供給に尽力した。
しかし、病院などの緊急施設からは、電話がなかなか通じないなど通信環境の混乱や燃料不足への焦りから、いろんなルートを通じてバラバラに燃料供給要請が発信された。そ
の結果、地元の石油組合や自治体、さらには首相官邸やエネ庁などにも直接、要請が飛び、再び石油組合に供給要請が寄せられるなど、情報が錯綜するケースが多く発生した。
つまり、どこの緊急施設にどれだけの油が必要で、そしてこれに対応するために、どこにどれだけの石油製品の在庫があり、だれがどのように届けることが可能なのか。これらの情報収集と整理に時間を要したのも事実だ。
この経験をもとに全石連は現在、政府が今後行う予定のエネルギー政策の見直しに際して「緊急時石油流通円滑化法(仮称)」の導入を求めている。その提案の核となるのが「石
油製品情報のエネ庁への一元化」である。
エネ庁に対し、平時から石油製品の在庫状況やロジステックなどの情報を集中させ、災害発生の際はその情報をもとに、エネ庁が石油製品を必要なところに、必要なだけ、迅速に配送するよう指示する。情報の混乱を回避することで、「72時間の壁」つまり真の緊急時に対応できる可能性が高まるのである。