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自由化の痛みに直面する全石連①高まる特約店制度不要論 2001年11月06日更新

自由化の痛みに直面する全石連
-組織基盤の縮小と対象事業の消滅-
久保 一裕
高まる特約店制度不要論

1996年3月末の特石法廃止を契機として、石油業界の自由化が急速に進展した。3年半後の99年末までには元売が4グループに集約された。石油販売業のシンボルであるSSも、94年3月末の60,421ヵ所から、2001年3月末には53,704ヵ所に減少した。石油市場の激しい変化の中で特約店、販売店は今どのような状況にあるのか、今後はどうすへきなのか。全石連は7月に昨年末から検討してきた「石油流通業の構造改革ビジョン」(中間取りまとめ)を発表した。それによって、特約店、販売店を合わせた石油販売業界の現状及び将来を展望してみたい。 特約店数は1990年には8,000を超していたが、99年には7,000を割り込み、1,000店を超す減少になっている。販売店も90年には23,000店を上回っていたが、99年には19,000店に、4,000店以上の減少である。石油販売業者の淘汰が進むとともに意識も変化している。
 全石油か今年1月に実施した「特約店制度に関する意識調査」によると、「特約店制度は今後も維持される」とする回答が61%、「特約店はなくなる」との回答か4割弱もあった。そのうち3割弱が「元売の(特約店)切り捨て政策が進む」と回答し、「販売店の系列外仕入れが拡大するから」との回答も4割弱ある。元売からも販売店からも見放されつつある、と考える特約店が全体の2割ちかくあることになる。一方、販売店側も「特約店は必要」とする者が52%、「必要ない」が48%とほぼ半々で、特約店自身の見方を裏書している。特約店は石油業界だけでなく他の業界にもあり、わが国独特の制度とされる。特約店制度は流通ルートが確立され、価格政策が維持されていた時代には、メーカーが地方の名士などを特約店にして、地域ごとのシエア拡大を図り、安定利益を確保できるメリットのある制度だった。
 また、販売店の育成にも適していた。反面、高コストシステムという難点がある。 特約店制度は、各業界で市場の成熟化、規制緩和、新規参入者の増加、小売業者の販売力強化などにより崩れつつある。例えば、食品・飲食業界ではスーパー、コンビニ、チェーンストアなど大型・新業態店舗の進出、酒販売業ではディスカウンターの登場、家電業界では量販店の勢力拡大、小売店のメーカーからの価格主導権奪取、卸中抜き、メーカーの直接小売り進出などにより特約店の排除が進行している。こうした業界環境の変化によって、特約店の制度としての役割が急速に低下し、特約店制度の高コスト的な側向か相対的に強まっている。 石油販売業界においても、規制緩和・自由化をきっかけにして収益が悪化し、ガソリンマージンが下落している。全石連構造改革ビジョンは次のように指摘している。
 「これまでのように、単にガソリンだけを販売していれはSS経営が成り立っていた時代は過ぎ去ろうとしている。具体的には、本業である石油販売業による利益確保を図るとともに、新規事業の開発や油外収益の向上などにより収益確保を目指す必要がある。また、身軽な組織、身軽な経営を目指し、ローコストオペレーション化を図り、最も効率的な事業に経営資源を投入するなどの取り組みが必要である」
 構改ビジョンはまた次のようにもいう。
 「高度成長期のように石油販売業の市場規模が継続的に拡大し、多額のマージンが獲得できていた時には、量を売れは一定の利益が確保できたから、経営の非効率は余り問題視されなかった。収益環境が悪化し、市場が成熟化し、シエア拡大が困難になってきている現在、経営の非効率さは、その企業の存在を危うくし、市場からの撤退も避けられない」一方、元売側においても特約店を集約化する状況がある。元売のリスク分散、販売店指導、シエア拡大などのために特約店は必要と考えられてきたが、石油需要の伸びの鈍化、コスト削減が求められ、「卸の中抜き」が進行している。販売業者数やSS数が過剰との認識も特約店制度不要論の背景になっている。そのため元売は特約店を集約し、効率向トを目指している。外資系元売には特約店機能を不要と
考え、元売と販売店が直結して仕切値設定、販売マニュアル整備、販売指導など強力に集約化を進めているところもある。特約店は市場構造の変化、それによる元売の政策転換で、効率化、集約化を求められ、危機的な状況に直面している。

『石油政策』10月10日号より
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