2011.11.17 のニュース
灯油在庫積み増しで供給確保も ―消費者への供給は販売業者が責務―
灯油は、本格的なシーズン入りを前にして業転市況が70円/L台に乗せている。仕切価格も連続して値上がりしており75円程度となってきた。原油価格の値上がりを受けて10月中旬から毎週1円強の値上がりとなっている。一方、ガソリンは減販の影響を受けてか業転市況も低調であり値上がり幅は少ない。
例年、11月頃になると灯油が値上がり「灯油高のガソリン安」の体系に変わるが、今年も灯油はシーズンを前にして値上がりしてきた。とくに今年は東日本大震災の影響もあり、東北地方の安定供給を確保するため在庫を早めに積み増しており前年に比べて約80万KL増の353万KLとなっている。
在庫は増加しているが、これは、JX日鉱日石エネルギーの仙台製油所、コスモ石油の千葉製油所の2製油所の操業が停止しており、東北地方の安定供給が懸念されるためである。まず東北地方の油槽所、タンクに供給して在庫増となっているが、灯油を消費者に直接供給するのは販売業者であり、被災地の供給に万全を期するためである。そのため在庫増となっても売りに出ることはなく、仕切価格も値上がりしているが、例年とは、まったく異なった動きとなっている。
灯油は季節商品で、天候に左右されるため見通しは難しい。昨年は販売減を見込み低在庫で臨み300万KLを下回る状況で推移して乗り切った。当初は在庫減が懸念されたが、供給が不足すれば愉入で対応する方針で臨んだ。その結果、各社の見込みどおり、低在庫で問題なく経過した。
灯油の需要は電気、ガスの転換が進み、今年も需要減が見込まれていた。しかし、東日本大震災における福島原発の事故のため電力不足となり、節電対策が実施され、オール電化攻勢は中止となり、灯油に回帰する動きと様相が変わった。夏場から灯油ストーブが売れるなど、灯油の増販が見込まれている。
例年3月末には、石油製品の需要見通しを策定する予定であったが、今年度は見通しを策定することはなく、今日に及んでいる。それだけに緊急事態が続いていることになる。
震災の影響で灯油の需要は減少するとみられている。だが、東北地方の安定供給を優先するため在庫を積み上げて万全を期すことになった。その結果、前年に比べると在庫は積み上かっているが、供給増とはなっていない。年内までは、現状の高在庫で推移するものとみられる。焦点は関東地区に寒波がいつ襲来するかにある。今年は厳冬という見通しもあり、ここ数日は暖かな日が続いたが、近く寒波の襲来も予想されている。灯油ストーブを用意している家庭では、冷え込めば使用頻度が高まり、灯油の使用量も増加するため、荷動きも活発化する。ここ数日間の気温がポイントとなる。
販売業者も今冬は増販を見込んで商戦に臨んでいる。仕切価格は連続して値上がりとなっており、適正マージンを確保することになる。原油価格は110ドル/バーレル台の高値で推移しており、末端市況も値上がりとなる。被災地は寒冷地であり、灯油高が、追い討ちをかけることとなるが、まずは安定供給の確保が第一となる。元売在庫が増加しても消費者への供給は販売業者が行なうため、きめ細かな対応が望まれている。