2011.12.05 のニュース
経産省 新産業創出で空洞化を回避 ―新しいエネルギー産業を育成―
経済産業省は29日に産業構造審議会・新産業構造部会を開き、2020年に向けた新産業の創出への道筋と、政策効果を試算した中間整理を発表した。今までは家庭用電気製品、自動車産業が、成長産業として日本の産業をリードして発展したが、これに代わる新産業を創出することで産業の空洞化回避を狙っている。
従来の低価格競争から高付加価値への転換をはかり、新興国などのグローバル需要を取り込むとともに、国内潜在需要の大きい分野での新産業と雇用創出のための仕組みを提示したもので、来年度予算、税制改正に反映させることになる。
東日本大震災を契機としてエネルギー供給制約や急激な円高などの新たな課題が発生した。産業の空洞化と国内雇用の喪失が懸念され、さらに中長期的には人口の減少や高齢化
によって潜在成長力が低下、高度成長の実現が困難となってきた。そこで現状の縮小均衡が継続する「我慢」の経済から「高付加価値の創出」に転換を図るとしている。
攻めの空洞化対策としては、国内の潜在内需を掘り起こす新しい産業分野として、①新エネルギー産業(スマートコミュニティ関連機器、省エネ機器、次世代自動車など)②ヘルスケア・子育て(健康関連、医療供給機器、子育て関連サービス)、③クリエイティブ産業(コンテンツ、観光、農業)、④まちづくり・住宅、⑤金融、⑥教育、⑦次世代ものづくり産業(次世代自動車、国内自動車市場の活性化、新医療技術の開発)をあげている。
新たなエネルギー産業としての事例としては、北九州市の東田地区の200世帯が参加しているエネルギー需給管理システムをあげている。石油業界からはJX日鉱日石エネルギーが参画しており、域内の電力需要の平準化やCO2削減、再生可能エネルギーの活用促進を実現する。
また、スマートメーター、蓄電池、EV等の導入促進、住宅、建築物の省エネルギー対策を強化する。再生可能エネルギーの導入促進では、固定価格買取制度の円滑な導入、メガソーラー、風力、地熱発電の立地・安全規制の見直しを検討、機器メーカーによる新規参入を見込んでいる。
新産業の政策効果の試算では、①新しいエネルギー産業、②ヘルスケア・子育て、③クリエイティブ産業、の3分野に絞って「攻め」の空洞化対策による新産業創出と消費拡大効果を予測した。2020年までの現状の空洞化ケースでは、経済成長は、ほぼゼロ(0.2%の増)、失業率は6.1%と上昇するが、新産業創出の成長ケースでは実質GDP成長率は1.5%増を維持するとしており、失業率も4.6%に減少する。その結果、両ケースの差は成長率で1.3%、失業率で1.5%の差が生じる。一人当たりの実質成長率はは空洞化ケースが0.6%であるのに対して、成長ケースは1.8%で、その差は1.2%となる。さらに経常収支でみると、空洞化ケースは、純輸出幅が拡大して2020年には赤字となるが、成長ケースは、経常収支の黒字幅が拡大して、その差は約30兆円となる。
就労構造からみると空洞化ケースでは自動車産業や関連産業の雇用減少幅が大きく、476万人の減少、成長ケースでは、90万人に留めることが可能となるとしている。