2011.12.07 のニュース
国による製品備蓄の増強 ―予算確保、備蓄法改正に取り組むー
資源・燃料の安定供給確保のための有識者会議の審議は2日で一巡した。東日本大震災における被災地の復旧・復興対策、災害に対する安宿供給対策、資源確保策、緊急時対応などについて、石油、石油開発.LPG、石炭、レアメタルなどの関係業界からヒアリング、各委員との意見交換を行なったもので、近く中間報告をまとめ、来年度予算、新政策に反映させることになる。
石油政策については、叩き台として石油製品の備蓄増強が、経済産業省から提示されており、有識者会議で了解をとりつけ、備蓄法の改正、国による製品備蓄の増強に取り組むことになる。現在の備蓄体制は国家備蓄が国内需要の90日分(約5000万KL)を原油で保有している。これに民間備蓄として70日分を備蓄法(元売、精製会社が対象)で義務量として保有している。通常では安定供給の立場から民間備蓄は義務量の70日分よりも多い77日分程度を保有しており、その半分は石油製品備蓄である。そのほか、SSの流通在庫は国内ガソリン需要の3日分程度が保有されている。
今回の震災では、東北、関東地区の製油所が一時、7ヵ所も操業を停止した。現在もコスモ石油の千葉、JX日鉱日石エネルギーの仙台が操業を停止している。震災直後は製品が供給不足となり、SSは営業停止を余儀なくされ、ユーザーがガソリンを求めてSSに殺到し混乱した。こうした流通面での混乱は、地震、渡波による道路の寸断や、ローリーの不足、SSの損壊という要因もある。しかし、災害時に直ちに消費者に供給するには、石油製品の備蓄が重要だと再認識された。
備蓄法では国家備蓄として原油を保有しているが、その前提は、中東などの政情不安による混乱、局地戦争での原油供給が一時途絶することを想定している。その際には、国家備蓄の原油を放出して、石油会社が原油を処理、石油製品を供給するというスキームとなっている。しかし、今回のような震災によって国内の石油製品の供給不足が発生した場合に、当面の石油製品を確保するには、原油の備蓄ではなく直ちに供給を確保できる製品で備蓄することが重要となり、製品備蓄を国家備蓄で増強する方針が打ち出されている。
今回の震災では、復旧までの間に備蓄法で義務量を引き下げ、石油製品の輸出の停止、輸入増、原油処理増で対応したが、緊急時対応としての速効性は鈍い。
民間企業が石油製品備蓄を保有するとコスト増となり、また必要以上に備蓄を持つことは、需給が緩和して市況が下落することになるため、国家備蓄で実施となる。経産省の叩き台では「ベースケース」として製油所・油槽所に4日分を民間タンクを活用して備蓄する。その場合の費用は、タンク維持費が2500円/KLで年間35億円と試算している。次の「10日分の増強案」は、ベースケースの4日分に6日分を加算するもので、6日分(約220万KL)のタンクを新設することになる。2万KLのタンクが100基必要となり、1基が30億円で新設費用が3000億円、維持費が100億円で計3100億円かかる。さらにSSに備蓄するなどの案もあるがコスト面で実現が難しく、4日分の増強
となりそうである。