日刊ニュース

2011.12.13 のニュース

原発事故で天然ガスシフトが加速 ―大型プロジェクトの達成を期待―

 アメリカでは「シェールガス革命」、IEA(国際エネルギー機関)では「天然ガス黄金時代の到来」と言われているように、天然ガスシフトが加速しそうである。原発事故の影響でLNG火力にシストすることになり、ガス需要が増大、アジアでのガス価格が急騰している。
 アメリカでのシェールガスの開発は2005年頃から実施され、その後は生産が増加、08年には国内生産量の8%を占めるに至った。将来は、ガス輸出国になるとの見通しから、日本政府も輸入を打診している。一方では、シェールガスの開発によって天然ガスが供給過剰となり、ガス価格が暴落し、その影響で原油価格も急落するとの予測も出ていた。しかし、東日本大震災を機に天然ガス事情は一夜にして急変した。原発事故発生で、日本の電力各社は、まずLNGの手当てに動き、アジアのガス価格を急騰させた。さらに、世界で原発の見直しの議論が起きたこともガス価格の高騰につながった。国内ではエネルギー基本計画の見直しが審議されているが、「原発の依存度を低減させる」方向で「縮原発」路線が打ち出されており、当面はLNG火力にシフトすることになる。
 平成23年度上期(4月~9月)の電力10社のLNGの消費は2473万トンで前年同月比で21%増となった。重油の受入は440万KLで36%増、原油は403万KLで68%増と増加率は高いが、実数ではLNGが圧倒的に多い。石油火力の場合は、新増設がなく休止中のものを再稼働させたもので、このような増加は一過性のものとみられる。原発のマイナスは化石燃料でカバーすることになるが、その主役はLNGになる。
 経済産業省も電力の供給サプライチェーンを確保するためには、ガス田の権益獲得、ガス田の買収が重要であるとしてJOGMECの出資枠を約1000億円に拡大するための予算を要求している。旧石油公団時代の予算規模であり、天然ガス開発を重点策としている。
 シェールガスの開発には、商社が参加を表明しており、国際石油開発帝石もカナダで開発に取り込む。
 天然ガス開発では、国際石油開発帝石がオーストラリアでイクシス・プロジェクトに取り組んでいる。投資額は約2兆円で、来年初めには、開発移行を決定する。生産開始は2016年末を見込み、生産規模はLNGが年間で840万、LPGが160万トン、コンデンセートが10万バーレル/日という大型プロジェクトである。6日には販売先が決まった。2017年から15年間で、東電が年間150万トン、東京ガスが105万トン、関電が80万トン、大阪ガスが80万トン、九電が30万トンの計400万トン。そのほか中電、東邦ガス、CPC、TOTALの引取分を合わせると生産量840万トンの全量の販売先がきまった。
 次のプジェクトであるインドネシアのマセラ鉱区(アバディガス田)もフローティングLNG方式(タンカーに天然ガス液化設備を搭載)で開発する計画が決まった。シェル参加することになっており、第一次開発は250万トンを目標としており、2020年に生産を開始する。投資額は約2兆円となっている。このように天然ガス時代を見込んで大型プロジェクトが立ち上がる時期にあり目標達成が期待されている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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