2011.12.16 のニュース
先行実施対策を推進へ ―製品備蓄、天然ガス、地熱開発に取り組むー
有識者で審議している「資源・燃料の安定供給確保のための先行実施対策」は、近く決定する。東日本大震災における被災地の復興対策、その後の石油、LPG、ガスなどの安定供給策の議論をまとめ。予算要求、新政策に反映させることになる。すでに補正予算、来年度予算要求には織り込み済みであるが、予算確保の目標達成、拡充を狙うものである。
先行実施対策の叩き台は、経産省事務局が提示しており、関係業界の意見を聞きながら、有識者会議の意見を取り入れて方針を決めるもので、経産大臣の了解を得ることになっている。現在、審議中の総合資源エネルギー調査会の原発政策とは違い対立軸はない。
精製・元売については、石油製品の国家備蓄4日分の増強が提示されている。現行の国家備蓄は原油で90日分を確保しているが、その前提は中東などの政情不安、戦争により原油の供給が途絶することを想定している。しかし今回の震災により、ガソリン、灯油など石油製品が供給不足となり、国が石油製品を備蕃する必要性が認識された。この石油製品の国家備蓄計画は、以前にも検討されたが予算が不足しており、国家備蓄に対しても無駄使いであるとの批判もあって見送りとなっていた。石油業界では、需要減少で石油製品タンクが余剰となっているため、有効利用であるとして歓迎している。国が民間企業のタンクを借りることになり、その賛用は、タンク維持費で2500円/KL、年間で35億円と試算している。そのほか、製油所、油槽所の耐震・津波対策のための増強の予算を要求している。
販売業界については、災害対応型SSを増強する。自家発電器、太陽光発電システムの導入を促進することに加え、モデルとしての中核SSの設置構想も出ている。
石油・天然ガス開発については、原発事故を機に、当面はLNG発電にシフトすることになり、集中的に政策資源を投入する体制を構築することになった。天然ガス、レアメタルの確保のためにJOGMECのリスクマネーの供給機能を拡充する。さらに円高対策とも重ね補正予算、来年度予算を合わせると約1000億円を計上している。新たに金属鉱山、石油・ガス田の買収や石炭の探鉱にも財政投融資会計の投資勘定を活用できるよう制度を見直すことになりJOGMEC法の改正を行なう。
国内開発では基礎物理探査、基礎試錐の推進、メタンバイトレート(MH)の研究、地熱開発に取り組む。MHは海洋産出試験を23年度から25年度にかけて実施する。東部南海トラフの渥美半島南南東沖70~80KLの地点となっており、オペレーターは石油資源開発となっている。事前掘削作業は掘削船「ちきゅう」を使用し減圧法(地層内の圧力を下げることでMHを水とガスに分解する手法)で実施する。予算は153億円を要求している。
地熱開発は開発調査事業では、新規で103億円(うち要望枠68億円)を要求している。有望な開発地点の構造調査、開発可能性を調査する。さらにJOGMECが民間企業に出資するために80億円を新規に要求している。地熱の電力供給に占める発電量は1%弱であるが再生可能エネルギーとして開発に力を入れることになっている。