日刊ニュース

2011.12.20 のニュース

原油価格は下落傾向を示すも ―イラン核問題もあり、地政学リスクは上昇―

 原油価格は急落してきた。OPECは、14日の総会で原油生産量をイラクを含む3000万バーレル/日と決めたが、この決定で需給が緩和すると市場が判断したためである。WTIは13日が100ドル/バーレルであったものが、14日に5ドル、15日に1ドル下落して2日間で6ドルの値下がりとなり、15日には約94ドルとなった。中東産は、104ドルと前日に比べて3ドルの値下がりとなった。
 今回のOPECの3000万バーレル/日は、現在の生産量を追認したことになるが、これを機に需給が緩和するのか否かは、もう少し様子をみる必要がある。原油価格は、需給のみで決まるのではなく、中東情勢などの地政学的リスク、金融商品として値動きするため見通しが難しい。天坊・石連会長は「今回の生産水準追随により、下値がやや下がる可能性を考えると、当面、90~110ドルで推移する」とコメントしている。
 最近の原油価格をみても11月平曰のWTIは97ドルで10月の89ドルに比べると11ドルの大幅な値上がり、中東産は109ドルで10月の104ドルに比べ5ドルの値上がりとなっている。
 9月はWTIと中東産との価格差は29ドル以上あったが、11月には10ドル程度に縮小し、ここにきて5ドル程度に縮小されてきた。世界の原油価格の指標はWTIであったが、最近ではブレント、中東産に代わってきており、WTIはアメリカ国内市況という見方となってきた。
 国内もWTIの下落が続き90ドルを割ったが、ブレント、中東産が100~110ドルという高値で推移したため、市況対策に苦慮した。原油価格は、これまでWTIが指標として定着していたため、WTIの下落が目立ち、これに影響して国内の石油製品が連動して値下がりとなった。
 WTIは原油価格の指標とはならないと指摘しても、長年の慣習から指標として定着しており、理解を得ることは難しい状況が続いている。
 そのなかで、ようやく双方の原油価格差が縮小してきた。過去はWTIが高く、ブレント、中東産が低いという価格体系であったが、この体系に戻ることはないにしても、価格差が縮小されてきたことは、市況形成からみれば歓迎されるところである。
 今後の原油価格の見通しとなると難しく、予測の域を出ることはない。それでも足元をみるとイランの核問題を巡って欧米との対立が表面化しており、イラン原油の輸入を停止する動きもある。イラン原油の輸入は9月では140万KLでシェアは8%と4位であるため、日本にも同調を求められ輸入を停止することになると、他の国から代替ができるのか供給面での問題が生じる。その結果、原油価格の高騰も予想される。イラクでは米軍の撤退が実施されるが、その後の治安、政治情勢が安定するのか、不安要素が残る。アフリカ、中東の民主化の動きも、落ち着いたものではなく、地政学的なリスクは上昇している。
 一方、リビアは原油生産が回復しつつあり、輸出が増加する。ヨーロッパの財政危機、アメリカの景気回復の動きもあるが、本格化には至っていない。中国、インドなど新興国の石油需要は増加するが伸び率は鈍化している。日本は東日本大震災の影響で景気回復は遅れる。これら不安定要素が多く、世界の石油需要は大幅に伸びないとの見通しもある。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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