2011.12.22 のニュース
先行実施対策が決まる ―石油業界の要望が織り込まれるー
「資源・燃料の安定供給確保のための先行実施対策」が20日の閣議で決まった。この先行実施対策は、経済産業省事務局が叩き台を提示し、有識者会議で関係団体からの意見を聞き、肉付けしたものである。閣議決定したことで政府の方針となった。この報告書は、東日本大震災後の「当面のエネルギー需給安定行動計画」(エネルギー・環境会議で11月1日に決定)を受けて先行して取り組むべき事項を決めたものである。来年度以降の予算措置、関連法令の改正、戦略策定に取り組むことになり、すでに補正予算、来年度予算要求に織り込まれている。石油業界では「望が受け入れられ、満足できるものである」と評価している。
上流部門(資源開発)の課題では、世界的な資源需要の高まりを踏まえて資原確保が重要であるとしている。シェールガスの商業化など、新たな資源確保の獲得機会が拡大するなど、エネルギー構造が大きく変化する中、効果的に集中して投資していく体制整備が必要とされている。
そのための対策として、①官民連係の下で来春を目途に資源獲得戦略を策定し、計画的な資源外交を推進する、②戦略表付に向けた支援体制として、権益獲得を促進するためJOGMECのリスクマネー供給機能を強化するとともに石炭、地熱開発業務をJOGMECに集約する、③海外の開発段階のガス田、金属鉱山、石炭の探鉱などの出資機能を強化、人材育成を強化する、④鉄道、電力、水などのインフラ輸出との連係、資源国のニーズを適切に捉え、わが国のポテンシャルを活用した協力により二国間関係を強化する、ことをあげている。石油・ガス開発のために、JOGMECに対して出資枠を拡大、補正を含めて約1000億円の予算を計上している。さらに支援体制の強化のためJOGMEC法を改正する。国内の資源開発では、三次元物理探査線「資源」による基礎物理調査・基礎試錐、商業生産を目指したメタンハイドレートの研究開発を着実に推進する。地区開発では、調査から建設段階までの一貫した支援体制を強化するために、新たに予算を要求している。
下流部門(元売・精製、販売業界)の課題は、震災において供給不足が生じ、石油・石油ガスのサプライチェーンの脆弱性が明らかになったことから、今後の首都直下型や東海・東南海地震を相定し、コスト(国民の負担)と効果を比較した対策が必要となる。
具体的な対策としては、①オイルターミナル(油槽所)や地域における中核的なSS石油ガス基地、石油ガス充填所の設備強化、在庫供給能力を強化する、②地域ごとの石油・石油ガス会社間において、災害時の共同計画を策定し、災害発生後直ちに供給できる法制度の整備(公取委との事前調整)、また、共同計画の適切な実施のためにJOGMECの支援体制を整備する、③石油製品の国家備蓄を強化する、④被災状況や需給状況を把握できるよう、平時から自治体と事業者間の悄報共有、情報収集体制を強化する、などをあげている。情報収集体制の強化は、全石連が要望した「緊急時供給円滑化法」の制定を視野に入れている。これらの対策が、どこまで採択されるかは、今後の政府のエネルギー政策にかかってくる。