2011.12.27 のニュース
石油税増税は1年先送りで実施 ―ユーザー転嫁は小幅で難航が必至―
政府は、来年度の税制改正大綱で温暖化対策のための特例として石油石炭税の増税を決めた。本来ならば今年の10月から実施される予定であったが、国会では審議未了で見送りとなっていたもので、来年10月から1年遅れて実施となる予定である。
課税額は原油・石油製品の輸入価格に10月から250円/KL(25銭/L)の増税、平成26年4月から500円、28年4月から760円の各増税となり足掛け5年間をかけて3段階に分けて累計で1510円(1円51銭/L)の増税となる。税収規模は年間で約2400億円となる。現行は2040円が課税されており4800億円の税収規模であるため合計では7200億円の規模となる。
すでに石油業界では軽油、ガソリンなどで5兆円規模の税金が課税されており、これ以上の増税には反対であると訴えているが、環境対策に名を借りた増税となった。
再度、国会で審議されるが、増税は見送りとみて安心していたものが、1年先送りでの実施となる。石油業界でも関心が薄れていたため、拍子抜けとなっている。10月から実
施と時間もあるが、ガソリンのユーザー転嫁となると25銭/Lと小幅であり難しいと対応に苦慮している。
税収の主な使途は、省エネルギー対策としてEVなどの次世代自動車の導入、住宅・建築物の省エネ設備の導入支援。再生可能エネルギーの地熱、バイオマスの開発など。分散
型エネルギーの促進としてスマートコミュニティーの導入、家庭用電池の導入支援。革新的技術開発では、CO2回収、貯蔵などのCCS技術の開発などをあげている。しかし、
一方では、森林整備、林道の建設などのバラマキ予算を要求する動きもあるため、石油業界では懸念を強めている。
昨年は増税反対で盛り上がりをみせたが、温暖化対策基本法の25%削減の中期計画も宙に浮いた状況にある。うち、電力の固定価格買取制が決まったが、具体的な買取価格は、
これから本格的な審議に入る。排出取引制度は先送りとなっており、政府の環境対策は大幅に後退している。
さらに3月11日の東日本大震災の発生で福島・原発問題を抱え、エネルギー基本計画の抜本的な見直しが議論となっており、原発政策が焦点となっているが、原発が縮小となるため環境対策は後退している。
先日、開催されたCPO17においても、京都議定書の継続には日本も反対、中国、アメリカの参加しない枠組みでは難しい状況にある。しかし、日本はCO2などの25%削減を公約しており、原発問題を抱えて、原発を縮小することになれば、化石燃料火力が増加するため、CO2削減は、ますます難しくなる。
このような状況を背景にして、環境対策を実行していくために石油石炭税の増税を実施することになる。
現在、消費税の増税問題が、政府、民主党での審議のヤマ場を迎えている。年内に政府方針が決まるか、否かという状況にある。消費税の増税については、民主党内部でも意見が対立しており、場合によっては政局に発展しかねない問題である。
消費税の増税議論の最中であるため、政府が来年度予算、税制改正を決めても、今後国会で可決、執行に至るのかは、見通しが難しい状況にある。