2011.12.28 のニュース
来年のWTIは100ドルを予測 ―需要増は米、カナダなど増産でバランスー
日本エネルギー経済研究所は2012年の原油価格の見通しを発表した。「基準ケース」ではWTIが100ドル/バーレル前後と見通している。ブレントはWTIに比べて10ドル高の110ドル、日本の原油CIFも同じく10ドル高の110ドルと見込んでいる。
最近の原油価格は指標となっているWTIがブレント、中東産に比べると大幅安で推移しているため、指標の役割を果たさないとの見方もあり、ブレントの見通しを加えている。
WTIとブレントとの価格差は今年に入って顕著となり、夏場では20ドル以上となった。最大が27ドル台まで大幅に拡大した。リビアの政情不安でブレントは値上がりを続けたが、一方、WTIは、集積所のクッシングの原油在庫が増加したため下落するなど、双方の価格差が拡大し、そのためWTIは世界の指標とならず、アメリカ国内の市況という見方となっていた。その後パイプラインの整備も進んだことなどから、価格差は10ドル前後までに縮小してきた。21日はWTIが98ドル、ブレント106ドルで価格差は8ドルとなっている。
通例で「高価格ケース」ではWTIが120ドル前後、「低価格ケース」では79ドル前後と見通している。今年のWTIの1月~12月の平均は約95ドルとなっており、この間、最高値が114ドル、最安値は75ドルとなっており、大幅に変動したことになるが、足元は98ドルで推移している。また、今年平均の95ドルは前年に比べると15ドル高となっている。
原油価格は、14日のOPEC総会で生産枠を3000万バーレル/日と決めたことで、需給が緩和するとの見通しから下落したが、ここにきて反発しており原油価格の見通しは難しい。
世界の石油需要は、経済の緩やか成長に伴って、前年比で100~110万バーレル/日増加して9010万バーレル/日に達する。増加の中心は中国、インド、中東等でありこれらの地域での需要動向が世界の石油需要を大きく左右する。他方、供給面では、非OPEC生産は前年比で90~100万バーレル/日増加する。増加するのは、米国、ロシア、カナダ等である。中でも米国は石油生産が堅調に増加し、需要が減少するため輸入依存度の低下が進む動きに進展する。この結果、OPEC原油への需要は前年比40万バーレル/日減少、3000万バーレル/日前後となる。従ってOPEC総会での3000万バーレル/日程度の水準が維持されれば、世界の石油需給はバランスし、維持されるとみている。今後は世界経済、イラク、リビアの増産、OPECの生産政策が需給バランス
を左右する重要な要因となる。
だが、地政学的リスクの動向が注目される。「アラブの春」を起因とした中東、北アフリカの情勢に加えて、とくに今後のイラン情勢が重要となる。核開発問題を巡って緊張が高まっており、欧米種国で経済制裁の強化が進められている。米国議会でイラン原油の禁輪に影響を与える「国防授権法案」が可決するなど、今後に緊張感が高まってくる。イランは世界第4位の輸出国(224万バーレル/日)であり、輸出先は中国、日本、インドなどのアジア市場であり、日本輸入シェアは4位である。イラン原油が禁輸となると、国際市場は大きく不安定となり、原油価格は高騰する。こうした地政学的リスクが現実化すると「高価格ケース」(WTIで120ドル)となる。