日刊ニュース

2011.12.29 のニュース

災害対応で油槽所、SSの予算措置 ―開発もJOGMEC出資枠を大幅増額―

 平成24年度予算の政府案が決まった。うち石油・天然ガス関連予算では2541億円で前年の2210億円に比べると331億円の増加となった。各予算はシーリングの段階で削減となっているが、東日本大震災により、石油供給体制の抜本的な改善が必要となり、石油対策関係は増額となった。
 新規項目では製油所の出荷機能の強化で51億円、拠点石油基地(油糟所)の災害時対応の強化で68億円となり、合計で119億円が元売・精製関連の予算増となった。すでに補正予算でも被災地域等で石油の供給拠点となる石油基地を選定して災害対応能力の強化で100億円が決まっている。
 また、緊急時に対応した石油製品の国家備蓄が実施となる。有識者会議でも審識されたもので、ガソリン、軽油、灯油、A重油の石油製品を国が備蓄する。最終的には4日分程度を備蓄するが、来年皮は10月から1日分を積み上げる計画である。
 現在の国家備蓄は、原油で5000万KLを保有しているが、その目的は、中東などの政情不安で原油供給が途絶することを想定していたものである。しかし、今回の震災のような国内の緊急事態を想定していないため、災害直後の石油製品の供給不足に対応できず、混乱したこともあり、国が直接、石油製品の備蓄をすることになった。その方策としては、民間企業の製品タンクを借りることになる。需要減少でタンクが余剰となっているため、有効利用という利点もあり、石油業界も賛同している。
 流通段階では、災害対応型中核SSの整備として、新規の57億円が計上された。自家発電設備の設置などにより、災害対応能力を強化し、緊急車両や、地域の重要施設に対して、安定供給体制の強化をはかるものである。これも補正予算で40億円か認められている。
 災害対応型SSの設置は元売ベースでも推進されており、充実が図られているが、一方では、SSの減少が加速しており、過疎化問題が提起されていることも深刻である。災害対応型SSを設置しても、そのSSが廃業、撤退ということになりかねない実態である。同様に製油所、油槽所も需要減で廃止される方向にあるため、強化策にも慎重さが求められる。
 いずれも震災を機にサプライチェーンの維持・強化が求められており、石油業界の要が受け入れられたことになる。
 福島原発の事故を機に、電源構成がLNG火力にシフトすることになるが、石油・天然ガス開発のために権益獲得、ガス田の買収に力を入れる方向となってきた。その結果、リスクマネーの供給をJOGMECが実施することになり、出資枠を276億円(今年度は85億円)に増額となった。これに新規で産業投資から400億円か追加される。さらに補正予算で203億円が決まっており、合わせると879億円となる。IEAも天然ガス時代が到来すると見通していたが、アメリカでのシェールガスの開発でガスが供給増となり、下落するとの見方もあった。しかし、福島原発の事故を機に、再度、ガス価格が値上がりする状況となってきた。日本でも石油・天然ガス開発を強力に推進する方向に急転換することになった。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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