2012.01.26 のニュース
電源構成で石油のシェア拡大を ーコスト高、脱石油政策の変更も絡むー
石油連盟は、現在審議中であるエネルギー基本計画の見直しに際して「緊急時におけるバックアップ休制を維持・強化するため、平時より石油火力の安定的な稼働を行なうべきである」との3次提言をまとめた。この提言は、以前から要望しているテーマである。東日本大震災によって原発事故が発生、これをバックアップするため石油火力を稼働させているが、困った時にのみ石油に頼るのではなく平時から一定の数量を引き取るべきであると要望しているものである。
この提言が新しいエネルギー基本計画に織り込まれるか否かは、今後の審議にかかってくるが、本来は、石油業界と電力会社による石油(C重油と生だき用原油)取引の問題は、商業ベースで行なわれているものである。
ポイントは、電源構成で石油のシェアが拡大し、取引数量が増加するかにある。石油のシェアが拡大するには、石油火力の新設・増強が行なわれることが前提となるが、IEA
の方針で日本は石油火力の新設・増設を見合わせており、その方針を変更するとなれば、これは高いハードルとなる。現在は石油の受入、消費が前年に比べて急増しているが、休止中の石油火力を点検して再稼働しているもので、発電能力そのものは増加していない。このことは、いかに石油火力の稼働率が低いかを実証している。これまでは石油火力の稼働がゼロのケースもあり、原発、LNG、石炭にシフトしている。脱石油政策(石油依存度の低下)の推進は、裏を返せば、原発の推進であり国の政策でもある。
また、原発推進のため石油が減少したこともあり、石油業界も電力用C重油の販売から撤退しており、重油の内航タンカーを廃船、精製設備も白油化に対応して重質油分解装置などを導入している。
今回の原発事故とこれに伴う定期点検で原発が停止することになり、4月には54基の全原発が停止することになる。予想された状況ではあるが、今夏には、節電とその他の化石燃料発電で乗り切れるかが問題である。この時期に新エネルギー計画を決めるタイミングと重なるため。原発の再稼働が認められるか否かも焦点となる。停電という事態ともなれば社会・経済が大混乱し、景気回復を後退させることになる。
緊急時対応として石油業界では、石油の安定供給責任を果たしており、電力会社に対して、平時から石油を一定数量を引き取るよう要請しているが、コスト高ということもあり、なかなか実現しない。国の誘導策として対応することも考えられるが、国が関与することになると多くの問題を抱えることになる。石油を電力会社が消費しないのは、石油が原子力、石炭、LNGに比べて割高であることがあげられている。エネルギー・環境会議のコスト検証委の発電コスト比較ではkWh当たりで石炭が9.5円、LNGが10.7円(設備利用率80%)としているが、石油は22.1円(50%)と36円(10%)という数字を示している。この数字でみる限り石油が圧倒的なコスト高の印象となり、誤解を招くことになる。同じ利用率80%で発電効率と燃料費を2010年実績で算出すれば、石油は15.7円となり他と比較しても競争力がある。