2012.02.01 のニュース
石油火力のコスト試算は過大 ―他の電源と同じ基準で評価をー
原発政策について、総合エネルギー調査会で審議に入っているが、石油連盟では「原発に替わってバックアップ電源として石油火力を安定的に稼働させるべきである」と要望している。発電コスト面からみると、石油はコスト高であるが、エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会のコスト試算では、さらに、不公平な数字が公表されているため「他の火力との比較は稼働率の前提を揃えるべきであり、発電効率向上のポテンシャルを適正に評価すべき」と善処を求めている。
発電コストは石油が他の電源と比べて高値となっているが「太陽光発電は石油火力と比較すると競争力があるとしており、緊急時にはフル稼働する石油火力固有の特徴もあり、太陽光と比較することは不適切である」と反論している。
電源コストは、原発の試算で前回(04年)の5.9円/kWhから8.8円となり、3円以上の増加(50%増加)を予測している。内訳は建設費の増加分、追加安全対策で1.4円、立地交付金などの政策経費で1.1円、事故リスク対応費(賠償、廃炉費など)で0.5円としている。政策経費は、交付金が1278億円(23年度予算)、もんじゅ等の研究費が1402億円で計3183億円となり、これを2882億kWhで割ると1.1円となる。事故対策リスク費は、稼働を40年として、柵島原発事故をモデルとして約6兆円としている。損害額が10兆円ならば1円、20兆円であれば2円弱となる。
石炭火力は5.7円(04年)、からCO2対策費用込みで9.5円(10年)と、10円強(30年)になるとしている。
LNG火力は6.2円から燃料費上昇で11円弱(10年)と11円前後(30年)としている。
一方、石油火力は16.5円から利用率10%で36~39円、利用率50%で22~25円としている。石炭、LNGの稼働率は80%としているが、石油の稼働率は10%と50%と低い稼働率にしており、石油が圧倒的にコスト高であるという誤解を招く表現となっている。発電効率は1987年以降の古い発電効率で評価しており、燃料費も40年間上昇するとしているが、現時点の価格で評価すべきである。
太陽光発電は、04年の試算はなく、10年が33~38円、30年が9~20円としている。世界的な量産効果と大幅な価格低下で、30年にはコストが半減するため安くなり、石油火力(設備率10%の36円)よりも、コスト面では優位に立つとしている。ただし、大量導入には、発電しない間の補助電源や蓄電池によるバッアップが必要があると、支援策を求めている。
地熱と風力は、現在でも9~10円というレベルであるため原発と同じレベルとなっている。
このようコストの試算でも、石油火力が割高になっており、脱石油と太陽光発電、LNG火力の推進を意図的に実施することが伺える。そのため、石油連盟は設伽利用率を80%として試算すると20.8円となり、さらに、最新式の発電方式(超臨界圧)の採用、燃料費を2010年実績、利用率80%で試算すると15.7円に大幅に削減されると反論している。石油火力を受け入れるか否かは電力会社の判断となるが、ベース電源としては石油火力を再評価すべきである。