2012.02.09 のニュース
電力とガスの厚遇こそ厚顔
2011年の石油製品需給統計概要によると、既報通り石油7油種計の国内販売は前年比2.4%減の1億9248万KLだった。実は、同統計には、液化天然ガス(LNG)
の数字も内包されており、それによるとLNGは10.9%増の8344万トンと絶好調な数字が残る。
LNGの大幅増は、原発の再稼働が停滞する中、主に少力発電向けの需要が牽引しているもので、石油製品でも同様に、C重油が19.9%増と唯一、石油ではプラスを記録している。ところがLNGは、工業系や家庭向けについても、ばら色の内需見通しが示されている。この反証として、減退感が強い石油の中でも、特に灯油やA重油の需要家が、どんどん天然ガスにひっくり返されてきた履歴が残る。
かつての天然ガスの攻勢は、実はオール電化に対する防衛色が強かった。3.11までは、石油とガスを攻めて、その版図の拡大が著しかったのが電力。電力の攻勢に対して、石油を攻めることで、版図の保全を図った都市ガス。両雄の攻勢で、版図の急縮の憂き目に遭う石油。これがエネルギーの縮図であった。
この縮図が、単なる経済合理性の結果なら、石油はこれを享受しなければならないのだろうが、実は、脱石油という、かつての国是のために、税金と助成いう手法を使って、いびつに牽引してきた政治と行政の歴史があるとしたら、どうだろうか。石油石炭税という財源を使ったエネルギー特別会計の中のエネルギー需給勘定、その中のエネルギー需給構造高度化対策から、太陽光や風力ばかりでなく、脱石油を推奨し電力や都市ガスに利する助成が満艦飾に用意され、これがまだ続いている。
しかも、電力や都市ガスは、「総括原価方式」という価格設定が、国から認められている。その原価には、総資産の3%の利益が含まれるうえ、原料コストばかりか、テレビCMなどの広告宣伝費、手厚い人件費や福利厚生などが含まれ、原油コストの上下動の転嫁不足に業績が大きく左右される石油企業とは、根本的に異なる。さらに地球環境税や消費増税も、彼らは「総括原価方式」によって、1円のロスも生じない。
電気やガスの助成は、企業個々の存立さえも厳しい石油からむしり取るのではなく、せめて「総括原価方式」で賄うのが筋であろう。減退著しい石油に重石を被せ、そこから得た原資を仕向けるべきではない。