日刊ニュース

2012.03.19 のニュース

「原発ゼロ」回答の委員6名 ―難しい原発政策での調整―

 総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会(15回)が14日に開催され、アンケート調査による各委員から提示された意見を元に、エネルギーミックスの選択肢について審議したが、原発問題は予想通りの対立となった。各委員からの電源構成における原発構成比は「ゼロから20~25%」という幅の広い数値となったが、うち6名が原発ゼロを回答している。このような数字は、これまでの議論でも提示されていたものであり、想定通りの意見となった。
 数値で政策目標を提示する前に、どういう社会でどのように暮らしたいのか、という議論がされないとエネルギーの話は進まない。将来社会のデザイン、制度設計、哲学を議論すべきである。過去のトレンド、経済モデルによる予測も限界にある、など数値目標の設定に反対する意見も出た。一方、「目標値を否定するのではなく、政府の予算、税制、規制などの政策遂行、企業の投資計画などに活用されている」と目標値を評価する意見も出た。このような意見の対立は、各委員の立場、自らの意見を反映したものであり、当初のエネルギー計画をゼロベースで見直し議諭するとの方針に沿って委員を選任した結果である。委員の人選に「原発推進」と「反(脱)原発」という立場を考慮の上選任して、国民的な議論をすることにしているため意見の対立は当然である。4月には方向性を打ち出すため時間的な制約もあり、引続き各分野の専門家の意見を聴くが、原発政策(問題)については、双方の意見を調整することは難しい。すでに第1回目の会合の時点で同様の意見が出ており、「3~4通りの計画、数値を示す以外に方策がない」との見方も出ている。このまま、議論を進めても、意見がまとまりそうにない。
 エネルギー基本計画の最大のテーマが原発であるため、電源構成で原発の構成比が決まらなければ、化石燃料、再生可能エネルギーなどの構成比も決まらず、基本計画そのものが決まらないことになる。原発を2030年度でゼロとする委員が6名と多く、原発推進派の委員との意見を調整することが不可能となれば、最終的には政治決断となり、民主党政権の方針でまとめることになる。
 石油業界の関心事である石油の安定供給、石油火力については、今のところ本格的な議論とはなっていない。石油は温暖化対策などにおいて、マイナスのイメージが多い。東日本大震災で石油の果たした役割、重要性は評価されてはいるか、石油火力がコスト高であることと、脱石油政策の浸透で石油は不利な立場にある。コスト検証委員会が算出した数字については、現状を無視した不当なものであるとして、石油業界としては正当なコストを算出する作業を行なっている。エネルギー政策の議論は一巡して各エネルギーごとの議論に入るため、基本計画に織り込むための働きかけが重要となる。
 このエネルギー基本計画の議論は同時に内閣府のエネルギー・環境会議で審議されており、その動向が注目される。政策の方向性は、エネルギー・環境会議が先行して議論して
いるが、総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会との意見の整合性を図る必要がある。これから大詰めの議論となるため、連係を密にして密議すべきである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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