2012.04.24 のニュース
廉売の実態解明に期待
公正取引委員会が今月10日、福井県の三谷商事などにガソリンの不当廉売容疑で立入検査を実施した。公正な競争市場の実現を目指す地元周辺事業者だけでなく、大手量販店の廉売に苦しめられている全国の中小SS事業者に朗報となった。翌11日に開催された民主党の石油流通問題懇談会(大畠章宏会長)でも出席議員から、この立入検査に関する質問が出た。公取委幹部は「これは強制権限に基づくもので、必要な証拠類を検査したうえで、関係書類の提出を命令するもの。本件については鋭意、事件として取り組んでいく」と回答した。
公取委が不当廉売容疑で強制権限に基づく立入検査を行うのは、1982年に牛乳の不当廉売事件以来で、ガソリンでは初めて、全体でも2例目だという。牛乳不当廉売事件は、千葉県松戸市で大手スーパー同士が牛乳の小売価格を巡って競争を激化させ、ついには販売利益を度外視して交互に販売価格を引き下げた。その結果、スーパーの行為が、商圏内に所在する十数店の牛乳専売店などの事業活動を、困難にするおそれがあるとして、不公正な取引方法に該当するとしたものである。
公取委は両店に対し、廉売行為をやめたこと、今後、同様の行為を行わないことなどを商圏内の牛乳販売事業者や一般消費者に周知徹底すること、などの排除措置を命じた。
ミタニと地元安値PB業者との廉売競争が始まったのは10年6月以隆で、その影響で周辺のSSの販売量が激減、「このままでは廃業に追い込まれる業者も出てくる」との危機感が広がった。
このため周辺事業者は公取委に対し不当廉売申告を繰り返し行った。これまでの判断は「シロ」か「注意」止まりだった。だが、それでも地元業者が粘り強く繰り返し申告を行い、昨年の夏以降は、公取委は迅速処理ではなく通常の審査手続きを行っていた模様だ。
今回の立ち入り検査でどのようなことが裏付けられ、そしてどのような措置が講じられるのか。さらにはこれらの廉売業者が、周辺業者の通常仕入価格と同等かまたはそれより安い価格で、なぜ販売することができるのか、その「からくり」が明らかになることに業界は期待を寄せている。また、このような極端な廉売は全国各地で行われており、公取委がその方面にもメスを入れることを期待している。