日刊ニュース

2012.05.18 のニュース

原油価格は下落を強める ―新年度入りで見通し困難にー

 原油価格は、下落傾向を強めている。WTIは94~95ドル/バーレル、中東産は106~107ドルで推移している。3月の平均はWTIが106ドル、中東産が122ドルであったことに比べると、10ドル以上の大幅な値下がりである。アメリカの株価の下落や、ギリシャ、フランスの政権交代による欧州債務危機の再燃を受けて、原油価格が下落してきた。短期間で乱高下しており、24年度入りしてなお、先行き見通しは難しくなっている。
 3月のドバイは120ドル台で推移、ガソリン価格も158円(4月初旬の調査価格)となり、高値感から需要が落ち込むとの見方が大勢を占めていたが、4月の値下がりによって割安感が生じたことは歓迎される。だが、市況が急落すると石油業界では対応に混乱が生じるため、厳しい局面となってきた。
 23年度の原油価格の高騰は、ガソリン、中間留分、重油などの石油製品全の値上がりでコスト高となり、日本経済に大きな影響を与えた。電力向けのLSC重油の4月~6月の打ち出し価格は7万9460円で前期に比べ9070円の値上がりとなっている。このコストは3月~5月での見込み計算となるが、原油価格CIF(南方物)が136ドルで13ドルの値上がりを見込んでいる。ここにきての原油価格の下落で、ガソリンの業転市況は値下がりし7万円であるため、ガソリンよりも重油の方が高値となっている状況である。これは重油が3ヵ月単位でのコスト積み上げ方式による値決めであって、毎日の原油価格、製品相場で形成される業転市況とのあいだに差が生じるのは当然の結果である。
 政府は、2月~3月の原油価格の高騰時から、不況脱出をはかるための予算措置、支援策などを講じているが、原油高は景気対策に水を差すこととなった。また、石油業界では
原油高によるコスト増のユーザー転嫁が急務となっていた。しかし、2月~3月のコスト高に対してのユーザー転嫁は、需給がタイトで推移したこともあって順調に行なわれ、3
月期の決算は、まずまずの業績となった。原油価格の値上がりで在庫評価益が発生したことも利益を押し上げた要因となった。原油価格の高騰は石油開発事業に増益をもたらし、
石油化学事業の収益を改善した。
 原油価格の動きをみると平成23年度の平均はドバイで109ドル、前年の82ドルに比べると27ドルの値上がりとなった。23年度初旬のドバイは4月平均が116ドルであったが、その後は下落、欧州債務危機によって100ドル割れの局面もあった。その後、イランの核開発疑惑問題でアメリカが金融面での制裁措置を打ち出し、日本にも輸入抑制を要請するなどイランと対立を強めた。イランもホルムズ海峡の封鎖を示唆することで対抗、これにより原油供給の途絶が懸念されたため、3月には120ドル台となった。日
本の原油輸入は3月では大幅に減少した。しかし、4月以降は欧州債務危機の再燃で原油価格が下落してきた。仕切価格は4月以降値下がりしており、末端市況も連続して値下が
りしている。仕切価格は12日からも3円の値下がりとなったため、今後も値下がりが見込まれている。
 24年度の原油価格の見通しは110ドルとの予測もあるが、世界情勢が混迷を極めていることから、見通し難となっている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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