日刊ニュース

2012.05.30 のニュース

ギリシャ危機とイラン核問題で ―原油価格は綱引き状態が続くー

 原油価格は、下落が続いている。下落の要因は、ギリシャの財政危機が欧州、アメリカの株安に影響し、これが原油安に連動している。一方、イランの核開発疑惑問題による原油の供給不安から高騰するとの見通しも絡んで、綱引き状態にある。
 足元のWTIは90ドル/バーレルを割って一時は89ドルとなったが、ブレントは105~107ドル、中東産103~104ドルで推移しており、3月の高値に比べると15~20ドルの値下がりとなっている。原油価格の水準はWTIが90ドルを割ったが、ブレント、中東産などは100ドル台を維持しているため依然として高値である。
 原油価格はWTIが先行して値下がりしているが、現在はアメリカの国内市況となり、世界の原油価格の指標としての役目を果たしていない。WTIは安値となっているが、これに代わって現在はブレントが指標となっている。リビア、エジプトの危機が中東に及ぶ状況となり、ブレントが高騰したが、一方、WTIは、アメリカ国内の事情が影響して在庫増となるなど流動性を欠くことになり、価格は膠着したためブレントとの価格差は拡大、現在も15ドル程度となっている。そのためブレントは100ドルを維持している。100ドルを割る状況が長く続くことになれば、産油国も原油安を問題視して減産で対応することになるとみられるが、これまでのところは静観している。
 過去において産油国は「原油価格は70~80ドルが望ましい水準である」としていたが、最近は財政規模が拡大したこともあり、「100ドルを確保したい水準である」と目標が変わってきた。石油開発業界も、原油価格は100ドル台が続くとみて開発事業に取り組んでいる。
 元売の平成24年度の原油価格の見通しではドバイで110ドル、為替が80円/ドルを前提としている。23年度の109ドルと同水準を見込でいるため、在庫評価の影響はゼロとしている。しかし、24年度4月のスタート直後から原油価格は値下がりとなっており、この水準で推移すると在庫評価損が発生する。原油価格の値下がりにより、現在は、ガソリンなどの末端市況は下落している。いつ下げ止めになるかの見通しは難しく、今後
も下落が続きそうである。
 原油価格は2月~3月で値上がりとなったため、一時は08年夏場のWTI147ドルの再現を予想する見方も出た。だが、4月以降は原油価格が下落傾向を強めており、見通しが難しくなってきた。昨年末のWTIは98ドル、昨年の年平均は95ドルで推移しており、エネルギー経済研究所の今年の見通しでは、標準ケースでWTIの年平均を100ドルとしていた。しかし、2月頃からイランの核開発疑惑問題でアメリカとの対立が強まり、原油の輸入禁止の制裁措置をEU、日本に求めた。これに対してイランはホルムズ海峡の封鎖を行なうと表明して対抗、緊迫感が強まり高騰した。ところが、4月に入るとギリシアの財政危機がEUに波及して、欧州、アメリカの株安となり、これが原油価格の下落に連動してきた。株価の下落は、世界経済の減速を意味することになり、景気減退で石油の需要が減少、需給が緩和する。一方、イランの核開発疑惑問題については、アメリカとの対立が激化し、武力衝突ともなれは、一気に高騰するとの見方も残っている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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