日刊ニュース

2012.06.26 のニュース

産業界から選択肢で要望 ―経済成長、国のあり方を説明―

 石油連盟、電気事業連合会、日本鉄鋼連盟など産業9団体は20日、エネルギー・環境会議から提示されるエネルギーミックスの選択肢に対して「この国のあり方を、どう目指しているのか、国民に分り易く説明すべき」との要望を発表した。エネルギー・環境会議では、総合資源エネルギー調査会、中央環境審議会などの報告を基に審議され、6月中にも方向性をまとめる。その後に国民的な議論を行ない、8月にとりまとめる。すでに8日には「選択肢に関する中間的整理」をまとめ、7つの戦略の視座、原発の依存度低減のシナリオを決めており、最終報告へ向けた大詰めの段階にある。
 今までの総合エネ調での議論は、電源構成(主に原発比率)、CO2の削減のみが集中しており、要望では「健全な経済成長との両立の視点に立っての議論が不足している」と反論している。さらに、①選択肢を選ぶことは、経済成長率、将来の国民生活、雇用のあり方、すなわち国のあり方が問われており、国民に分りやすく説明すべきである、②具体的には、曰本再生の基本戦略(23年12月の閣議決定)の政策目標(2020年度まで実質成長2%程度)との整合性が取れているのか、③電力料金が最大2・5倍の上昇が見込まれているが、国民一人当たりの負担額が、どの程度になるのか、分り易く説明すべきである、④厳しい環境下にある製造業の海外移転の可能性に対して検証を十分に行なった上で合理的、現実的なシナリオを提示すべきである、などを要望している。
 今回の総合エネ調の議論は、当初から原発問題に集中しており、「反原発」対「原発推進」の対立の構図での議論にほとんどの時間を費やしている。福島原発事故に対する世間の批判が強く関心事となっているが、原発のみでなく、他のエネルギー問題も含めて審議すべきであるとの意見も多く出ている。原発低減の意見が多くでたが、政府は委員の選任に際して反原発のメンバーを多数加えており、当然の成り行きといえる。審議中でもエネルギー、産業界からの意見を聴くこともなく、押し切るかたちでまとめたため、十分な審議とはなっていない。
 結果的には、2030年の原発の構成比、①ゼロ、②15%、③20~25%の3つの選択肢を決め、これに再生可能エネルギー、石油火力の比率を配分している。この3つの選択肢を一本にまとめるか複数にするかは、今後、決定されるが、15%案が大勢の方向であるようだ。この原発の議論の終盤に、政府が夏場の電力不足の解消と安定供給を確保するとの方針から大飯原発の再稼働を決めた。この政府の決定に対して、当初の原発反対の方針にブレが生じたとの批判もでたが、現実的な対応へと流れは変わってきた。原発ゼロ派からは、「現在、審議中であり、政府は再稼働には慎重にすべきである」との意見が出たが、短期的には現実的な対応であるとしで再稼働に踏み切ることになり、反原発の運動に対しても水を差すことになった。
 電力不足による停電が発生した場合、社会、産業界への影響が大きいとみて、政府も再稼働の方針を決めた。橋下大阪市長も再稼働を容認することになり、電力の安定供給を優先することが、方針として、共通認識されたことになる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE