2012.07.06 のニュース
予算要求は資源確保戦略の展開 ―災害時に備えインフラ整備を強化―
経済産業省は、「資源確保戦略」、「資源・燃料の安定供給の課題と今後の対応」を打ち出し、総合資源エネルギー調査会で審議中である新しいエネルギー基本計画に織り込む予定である。同時に来年度予算に新規項目として8月末に要求する。また、民主党化石エネルギー検討小委員会でも、党としての石油政策などを審議しており、近く報告書をとりまとめ、新政策として反映させる。
東日本大震災以降、エネルギー政策の審議は原発問題に集中したが、エネルギーの安定供給確保の重要性が認識され、石油関係では、まず災害時対応の復旧、復興関係予算が今年度で計上された。来年度予算では新たなサプライチェーンの強化、資源確保策などが打ち出される。
「資源確保戦略」は、08年3月の「資源確保指針」、昨年12月のエネルギー・環境会議での「資源の安定的な確保の取組みも一層強化する」との方針を受けたものである。中国、インドなど新興国の資源需要の増加で資源確保競争が激化しており、一方、資源国の資源ナショナリズムの台頭もあって資源確保は難しくなり、資源価格の高騰が問題となっている。
また、震災後、原発が稼働を停止し、化石燃料火力にシフトしたため、LNG、石油の調達コストが急騰したことで輸入増で11年の貿易収支が、31年ぶりに赤字となった。災害前は、アメリカでのシェールガスが増産されているため天然ガス価格が急落するとの予測もあったが、福島原発の事故を機にLNGが急騰する状況へと変わってきた。
原油価格も3月にイランの核開発問題で、ドバイが120ドル/バーレル台に急騰したことで石油製品価格は高騰した。その後は90ドルに下落したが、ここにきて95ドルと再び値上がりに転じており先行き不透明となっている。
政府はLNGの供給確保を図り、天然ガスシフトを強めるため、アメリカなど対して輪入を要請している。しかし、アメリカは、現在、輸出を認めていないため、エネルギー省の許可を得る必要があり、早くとも2016年以降となる。そのため海外の天然ガス(シェールガス)開発などに対してJOGMECからの出資など支援強化策を打ち出している。国内では広域パイプライン計画、地下貯賊システムの開発に取り組むことになる。国内の天然ガスシフト対策では、導入に際しての税制面、助成面で優遇措置が講じられており、石油との公正を欠くとして、石油連盟は政策の見直しを求めている。広域パイプライン計画のコスト負担のあり方など、総合的に検討すべきと疑問を投げかけている。
また、国内の災害時の安定供給確保策は、昨年12月の先行実施対策で復旧対策が実施となっており、今後の対策としては、出荷設備の機能強化、地域ごとの製品の国家備蓄、各社の協力体制の構築をあげている。さらに燃料インフラ(製油所など)は太平洋側に集中しているため、今後、首都圏直下型地震・連動型地震の発生を想定した場合、全国への供給を確保するためには大規模なインフラの整備が課題となる。現在、石油製品の需要減少のため、SS、油槽所が減少し、サプライチェーンが脆弱となりつつあるが、現在のインフラを維持するには、石油の需要減少を抑え、今後も一定の需要を確保することが重要となる。