日刊ニュース

2012.07.10 のニュース

コスト増負担のあり方が問題―どの選択肢も再生可能エネを過大に期待―

 総合資源エネルギー調査基本問題委員会(28回)は5日に開催され、6月29日に決まった「エネルギー・環境に関する選択肢」について、国家戦略一からの説明と意見交換、次いで、新エネルギーの蓄電池、水素開発の現状と展望についてメーカーからの説明が行なわれた。
 エネルギーミックスの選択肢は2030年の電源構成の比率で、①原発をゼロ、②原発15%、③原発20~25%の3つのシナリオが提示されたが、このシナリオは、総合エネ調の報告で大筋で採択されているため異論は出なかった。今後は国民的議論となり、パブリックコメントの募集(7月末まで)、意見聴取会の開催(全国11力所で8月中旬まで)、世論調査(8月上旬)などが実施となる。近くデータベースの情報が提供されるが、分り易い解説を求める意見が出た。
 枝野経済産業大臣は「総合エネ調で審識して決めた選択肢を国民的な議諭として開始する。今後のエネルギー政策を決める重要な時期にあり、次世代に影響を及ぼす選択となる。分かり易い説明、数値の提示方法などの指摘もあるが、そのことが世論を誘導することになりかねないため公平、慎重に扱いたい」と語った。さらに「7月から太陽光発電などの固定買取制が実施となり再生可能エネルギーの供給拡大に繋がる。引続きグリーン政策大綱の策定の審議に入っている。また、先日はロシアを訪問、天然ガス開発、パイプライン計画で意見を交換してきた」とエネルギー政策の取組みを説明した。
 3つの選択肢は、①原発依存度の減少、②化石燃料の依存度の減少、③再生可能エネルギーの増加と省エネルギーの推進、④CO2排出量の削減、を目的としている。原発縮減による電力不足を再生可能エネルギーの増加でカバーするが、そのコスト負担のあり方が問題となる。
 化石燃料は2010年が63%であり、ゼロシナリオでは2030年には65%と若干の増加となるが、その他のシナリオでは50~55%に減少する。だが、現状では原発が稼働停止しているため、LNG火力、石油火力が増加している。そのなかで原油価格の高騰が輸入増と重なったため、11年は貿易収支が31年ぶりに赤字となった。とくにLNGは高値となり、調達コストの増加や供給確保など、新たな間題が発生している。
 選択肢の最大のテーマは、再生可能エネルギーのシェアが、どこまで拡大できるかである。現在(2011年)10%である比率(うち水力が8.5%を占める)を30~35%に引き上げることになるが、当面は太陽光、風力が中心となる。シナリオでは、太陽光は、現状が90万戸(再生可能エネルギーの0.2%)を1000~1200万戸(原発ゼロの場合に拡大する。風力は30ヵ所(43億kWh)を450~610ヵ所(903億kWh)に拡大する。そのために固定買取制度がスタートしたが、設備投資賞用、送電網の整備などのコストが巨額となるため、電気料金の引き上げにより、ユーザー(国民)のコスト負担増となる。
 結局、いずれの選択肢でもエネルギーコストの上昇は避けることはできず、産業への影響は大きくなる。そのため、工場の海外移帳による空洞化、雇用問題など、経済成長への影響を回避する対策が求められる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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