2012.07.20 のニュース
聴取会の運営方式に問題も ―世論形成には裏工作は当然―
総合資源エネルギー調査会基本問題委員会で審議している新エネルギー基本計画の骨子は月末にまとめられ、8月末には計画策定となる。審議の中味は約90%を原発問題に費やし、3つのシナリオを決め、現在、各地で聴取会を開き国民的議論を展開している。3つのシナリオは、①原発ゼロ、②原発15%、③原発20~25%、の3案を提示して、各シナリオに基づき、各3名が意見を述べる方式で行なわれた。この方式で国民からの意見を聞き、最終的には政府が方針を決めることになる。
しかし、聴取会の運営を巡っては、仙台、名古屋の開場で出席者の中に東北、中部の電力会社の社員が選ばれ、原発推進の意見を述べたことで、参加者からヤラセではないかとの意見が出るなど紛糾した。事務局は公平を期すため抽選で人選した結果であるとしているが、今後は、その人選の方法を変更することになった。
原発推進を企業ぐるみで取り組んでいるとの反発が出ており、以前、原発誘致の公聴会では電力会社、エネ庁関係者が裏工作したとして問題となった。一方、原発反対派も、支援団体、市民団体を動員しているとの意見もある。双方とも同じという見方になるが、企業、官庁ぐるみで働きかけをすることには批判が出ている。社会では世論形成のための工作は、日常行なわれており、これを規制することは言論の自由を束縛することになるため、線引きすることは難しい。今回の総合エネ調での原発問題において、政府の方針で原発反対派の委員を入れることを決め、推薦派とのバランスを保ったが、自民党時代の委員構成とは、明らかに違った。政権政党の意見を反映させることが、民主主義の原則であり、当然の結果である。政府の方針である「福島原発事故の反省を踏まえて原発への依存度をできる限り低減する」ことを基本方針としている。
最終的には、原発ゼロを狙うが、現実的には電力不足が発生するため、不足分を再生可能エネルギーでカバーするシナリオである。実際に、全原発が稼働停止で5月~6月はゼロとなったが、電力不足で停電とはならなかったため、原発の再稼働に対しての反対運動が盛り上がりをみせている。だが、今年の夏は関西地区では電力不足が発生すると判断して、政府は大飯原発の再稼働を決めた。電力不足で停電となれば、経諸活動や市民生活への影響、病院などでは治療に支障が生じれば人命にかかわるなど、総合的に判断して再稼働に踏み切ったことになる。国民からも再稼働反対の逆動が盛り上がりをみせ、一般市民がデモに参加するケースが増加している。経済産業省前の原発反対のテントも違法であるが撤去されることなく現在も残っているという現状である。
原発反対派からは、再稼働の政府方針に対し、①節電で乗り切れる、②電力会社のピーク電力の数値が高い水準に設定されており、電力不足を誇張している、③不足する電力の数値が不透明であり、昨年も電力不足を乗り切った経過もある、などの意見が出ている。だが、猛暑で実際に停電が発生した場合、誰も責任を取ることはできない。
最終的には政府が再稼働を決めた。総合エネ調の委員からは反対の意見が出ているが、政府の判断を良しとして今夏を乗り切る以外にない。