日刊ニュース

2012.07.26 のニュース

石油火力のシェアは減少へ ―石油業界の要望は厳しい状況にー

 石油連盟は、新しい「エネルギー基本計画」の策定に際して、5次提言を行なった。とくに電源構成について、石油火力を供給安定型電源(バックアップ電源)として位置付けることを、政策提言としているが、厳しい状況にある。すでに政府が提示しているエネルギーミックスの選択肢で、電源構成では5~6%という数字となっており、石油業界の主張は否定され、不利な状況にある。
 石油火力の電源構成比は、2009年が7%、10年が10%となっているが、石油連盟では「これを15%(2020年)に引き上げる」ことと、さらに「老朽石油火力を高効率にリプレイスする(必要に応じて排煙脱硫装置を装備する)」ことを要望している。因みに、原発のほとんどが停止している現時点では15%は達成されている。
 しかし、石油火力の増加は、割高な石油の消費が増加して燃料コストを押し上げるため、電力会社は反対している。排煙脱硫装置の建設となると巨額な費用がかり、割高でもLSC重油を購入した方がメリットがあると判断している。いずれも経済性を追求した商取引きの問題であるため、政策論とはならない。
 また、石油火力の新増設は、IEAが原油価格の高騰をさけるため認めないとの方針を打ち出していることもあって、石油火力は新設はなく、操業を停止していた古い設備を立ち上げている状況どなっている。
 最近の電力10社の5月の受入は、重油が126万KLで前年比143%増、原油(生だき用)が142万KLで191%増。6月の受入は、重油が115万KLで109%増、原油は114万KLで88%増となっている。震災前の昨年1月の受入が重油、原油が各50万KL程度であったのに比べると大幅な伸びである。
  11年度では、重油が1219万KLで99%増、原油が1411万KLで147%増となっている。今後も増加する見通しだが、新設の計画がないため、現状では増加にも限界があり、長期では石油火力のシェアは減少し、再生可能エネルギーが増加するシナリオとなっている。だが、実際に再生可能エネルギーが想定通り導入されるか疑問視しする見方が多い。あくまで政策目標であり、原発削減の方針を貫くため、無理な目標を掲げている。
 このように、足元では電力用の石油消費が急増しているが、審議中の長期エネルギー見通しでは、石油火力のシェアが増加するどころか、減少する見通しとなっている。
 地震災害による原発の事故に際しては中越地震で柏崎刈羽原発の停止、福島の事故以降は、一時、全原発が稼働を停止したこともあり、石油火力をフル稼働で対応、石油業界は安定供給に努めている。
 「困った時の石油頼み」ではなく、平時より一定の石油火力を稼働させることで、石油の引取数量を確保するよう電力各社に要請しているが、石油はLNG、石炭に比べ割高であることから敬遠されており、とくにLNGシフトが目立っている。
 日本のエネルギー政策は、脱石油政策を柱に原発推進に舵を切っていた。だが、原発削減に方針転換し、そのマイナス分を再生可能エネルギーでカバーすることとなっているが、この見通しを誤った場合、日本経済に与える影響は大きくなる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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