2012.08.06 のニュース
原油の急落局面では業績悪化 ―先取り値下げでマージン減も重なるー
4月~6月の元売(石油事業)の決算がこれから発表となるが、大幅な業績悪化か予想される。その要因は、①原油価格が期間中に約30ドルの急落となり、在庫評価損が発生した、②製品市況の急落が予想され高値在庫を早く放出することで売り急ぎとなり、結果的に市況が下落してマージンが減少した、③販売業者も仕切価格の値下がりを見込んで先取りして値下げした、固辞外市況が安値となったため製品輸入が行なわれ国内市況が下落した、などの点が重なったことがあげられる。
短期間に原油価格が急落したことで在庫評価損が発生したが、原油価格の下落幅よりも市況下落に拍車がかかり、マージンは減少した。
石油株は、市場全体の株価に連動して値下がりするが、業績悪化を先取りしてか、現在、決算発表前に値下がりをみせている。原油急騰は経済を混迷させる不安材料とみなされるが、石油業界にとっては増益のチャンスとの見方から株価は上昇する。逆に原油の下落局面は、株安となるのが通例となる。
原油価格をドバイでみると、4月初めに120ドル/バーレル台であったものが6月末は90ドルへと30ドル急落した。その後値上がり、足元は100ドル程度まで値上がりしている。昨年末は100ドルであったが、イランの核開発問題で今年3月には120ドル台に急騰、一時は08年夏の急騰(7月の平均が133ドル)を再現どの予測もあったが、その後は欧州の財政危機の深刻化で急落した。
原油価格の値下がりに連動して製品の業転市況が下落することになり、週決めの仕切価格も即値下がりとなる。値下げ幅も週に3円と大幅となり、さらに値下がりが見込まれると、販売業者、ユーザーが買い控えすることになり、一時的に需給が崩れることで市況下落に拍車がかかる。すると原油コストの製品価格への適切な転嫁が困難となり、マージンが低下する。原油CIF(当月輸入価格)の直近の業転市況との価格差をマージンとして算出すると、時間的ズレもあるが、製品市況は先取りして値下がりするためマージンは
大幅に減少する。
以前のコスト変動の月決め制の時期では、原油価格の下落局面となると、石油製品価格の値下げを遅らせれば、その間、マージンが増加したため利益が確保できた。そのため、原油安は販売業者からみると増益(チャンスとなる時期もあった。だが、現在の週決めの市場連動制では、原油下落は、直ちに業転市況の値下げとなり仕切価格も値下がりするが、それを先取りして末端では値下げするため、販売業者もマージンを吐き出すことになる。一方、値上げ局面では、在庫評価益の発生で、決算上は利益増となり、同時にユーザー転嫁も浸透しているため、マージンも確保される。石油は市況商品となっており、原油相場に影響を受ける。
過去の値上げ局面では、末端市況の値上げが遅れて、ユーザーへのコスト転嫁ができず、販売業者は赤字となったが、現在では即値上がりしてマージンが確保され、元売は在庫評価益と相殺しても利益が確保できる状況となる。だが、4月~6月のように下落局面では、在庫評価損が発生し、さらに原油価格の値下がり分以上に、先取りして市況も急落するためマージンは減少、業績は大幅に悪化する。