2012.09.04 のニュース
経産省、来年度の重点策決める ―空洞化の防止、電力供給不安の解消―
経済産業省は、平成25年度の経済産業政策の重点策を決めた。現在、展開中である日本再生戦略の、①「グリーン」(エネルギー・環境)、②「ライフ」(医療・福祉)、③「農林漁業」、④「中小企業」の4つプロジェクトを柱に展開、予算を重占的に配分して政策の実現をはかる。
うち、エネルギー政策は再生可能エネルギーの開発・利用の最大限の加速化(固定価格買取制度の着実な実施、蓄電池・地熱の技術開発)、化石燃料の有効利用の促進(火力発電の高効率化、クリーンコール、天然ガスシフト)をあげている。資源・化石燃料の供給確保策では、①資源外交による権益確保、②LNGなどの調達先の活用、③改正JOGMEC法の活用(改正法は成立)、④機動的な国家備蓄の実施(石油製品備循の増強)などで予算要求、政策を推進する。
グリーン戦略では、①次世代自動車の需要創出、普及、インフラ整備、②蓄電池戦略の低コスト化と普及、国際標準の獲得、③スマートコミュニティでのエネルギー政策、インフラ輪出と連携、などに取り組む。
そのほか、ライフ戦略では、「稼げる医療機器」の創出、医療サービスと一体となった海外展開、介護ロボットの実用化、医療・介護周辺サービスの拡大。農林漁業戦略は商工業の力を生かした農商工連携・6次産業化の促進(植物工場など)、クールジャパン戦略と連携した市場の拡大。中小企業戦略は、「ちいさな企業」に光を当てた地域の核どなる活が倍増プロジェトを実施する。
重点策を実施するための現状認識として、従来からの財政危機や長引くデフレなどの構造的課題に加え、原子力事故、震災、円高、欧州危機等の外的要因が重なりかつてない危機に直面していることを提言。
具体的には、円高により、根こそぎ空洞化のおそれがあるとしている。加工組立のみならず、部品材料までが海外に移転、中小企業の集積も崩壊のおそれが出てきた。このままでは円高が解消しても国内回帰せず、国内雇用に大きな影響を与える。さらにエネルギーが制約される危機として、地政学リスケなどで化石燃料価格が高止まりしており、割高な再生可能エネルギーの増加が不回避な中、安定供給とコスト(電力料金)の両面で国民に大きな不安を与えるとしている。
高度成長期以来の「大量生産・価格競争」モデルからの脱皮が進まず、グローバル市場での「稼ぐ力」に陰りが出ており、企業戦略が行き詰まりとなってきた。マクロ経済も財政赤字の拡大、貿易赤字の定着、さらには経常収支の赤字化、急激な日本売りのおそれも出てきた、など厳しい状況下にあると分析している。
そのため、まず、最優先課題としては、①原発事故・震災からの再生、②円高への対応・空洞化の防止・デフレからの脱却、③電力不足不安の解消、を掲げている。構造的課題へ
の対応としては、エネルギー需給構造を抜本的に再構築して、エネルギー制約下でも世界で稼げる産業構造へ転換する。価値創造経済へ転換して、グローバル市場での産業・企業・
個人の『稼ぐ力』を抜本的に強化する。企業の成長を個人・地域の豊かさに結び付け、「一人一人が成熟した豊かさを実感できる社会」を実現すると目標を掲げている。