2012.09.13 のニュース
地元重視の災害時協定に
東日本大震災では、警察や消防、病院など災害時に重要となる施設への燃料供給が危機に陥った。官公庁の石油製品調達は、競争入札のところが増えていたが、大震災では落札事業者が営業を停止したり、単独では供給要望に応じられない状態になった。
そのため、これらの公共施設はこれまで付き合いが途切れていた石油組合に「なんとか油を供給してほしい」と申し入れた。要請を受けた石油組合は、通信手段など困難な中で組合員と連絡を取り、救援にあたる緊急車両や病院への燃料供給に全力で取り組んだ。その結果、この燃料危機を教訓に従来の一般競争入札から官公需適格組合としての石油組合との契約に切り替えるケースが一部に見られたが、ほかの多くは再び競争入札に戻った。
全石連や石油組合は「喉もと過ぎればまた安値調達か」「これでは地方の中小企業は経営を維持できず、再び災害が起きたときには供給できるスタンドそのものがなくなる」と国や都道府県に対し、官公需適格組合制度に基づく地元事業者からの燃料調達を強く求めた。いま、そうした取り組みが徐々に成果を上げ始めている。
きっかけは大震災を機に締結要請が押し寄せている石油組合との災害時供給協定である。災害時協定では地元石油組合が組合員のネットワークを駆使して燃料供給に務めるのだが、それを可能にするために平時の燃料調達において「地元事業者の受注機会確保に務めること」を項目に盛り込んだ協定が増えている。さらには協定に基づいて燃料供給に取り組む石油組合組合員と非組合員を明確化するため、組合員名簿を定期的に提出する条項まで明記するケースも登場した。
こうした協定を結ぶには自治体や地方公共団体の長や担当者との粘り強い交渉があったと聞く。実際に大災害が起きた時、円滑に供給するためには組合事務局や組合員との普段からの連絡・連携が必要であり、なによりそこに組合員のSSがなければならない。
組合側がこうした実情を訴え、地元事業者の積極活用を促した結果、自治体側も理解を示し協定書に前述の条項を入れ始めたのである。災害時に一方的に優先供給を約束するだけでなく、普段からの燃料調達を地元組合員に委ねることの意義が認識され始めている。