2012.09.21 のニュース
総合エネ調でも原発ゼロで対立 ―三村会長も政府方針に注文―
総合資源エネルギー調査会基本間題委員会は、18日に開催され、先に決まった政府の『革新的エネルギー・環境戦略』について各委員からの意見を求めた。意見は予想された「反原発」と「原発推進」に分かれたが、最後に三村会長(新日本製鉄会長)が「政府の方針である2030代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する。その過程において安全性が確認された原発は、これを重要電源として活用するとしているが、この場合の原発ゼロが目標であるのか、何を指すのか明確にすべきである」と主張。実現に向けた3つの原則のうち「40年運転制限を厳格に適用する、としているが、法律的な根拠があるのか」など問題点を指摘した。「これらの点がはっきりしないと、今後のエネルギー基本計画の議論が空転することになる」と政府に回答を求めた。
本来ならば、政府の方針に沿ってエネルギー基本計画策定のための識論を進めるところであるが、本題の議論に入る前に、原発ゼロを巡っての方針で仕切り直しとなり、今後の審議の日程も未定となった。主な意見は、原発推進の豊田、山地委員ら5氏が連名で「原発ゼロは日本経済の崩壊・空洞化につながり、日本の国際的責務を果たす能力を減
殺するものであるため、一定規模の原発を維持するよう、再考を求めたい」との意見書を提示、さらに「電気料金が2倍になる。製造業の競争力の低下で年3兆円の国富を流出する。日本のエネルギー自給率は4%に過ぎず、エネルギー安全保障体質を脆弱にする。再生可能エネルギーの比率20%~30%の拡大は裏つけがなく技術的限界を超えた物である」とつけ加えた。
柏木委員(東工大教授)からは『総選挙に向けゼロという数字を示したと推察される。しかし、サイレント・マジョリティー(声なき多数は2030年代のゼロを求めている可
能性は極めて高い。仮に原発をなくすのであれば、使用済み核燃料の再処理を続けるのか。再処理で取り出したプルトニウムをどうするのか矛盾点も多い」との意見も出た。
反原発の委員からは「原発ゼロは評価できる」との意見が述べられた。飯田委員は「曖昧であるが、原発ゼロが入ったことは大きな政治判断と評価できる。しかしながら、3原則の次に、国民的な合意に基づき使用済み核燃料の総量規制を定めるべきである。原発ゼロに向けての政策的な措置を検討すべきである」と述べた。さらに「建設中の大間原発、島根原発の建設再開を枝野経済産業大臣が容認したと伝えられているが」と質問し、これに対して枝野大臣は「原発ゼロは選挙目当てといラ意見もあるが、まったくその意図はない。党内の若手が、『原発ゼロでないと選挙に勝てない』と言ったとの声もあるかもしれないが、原発ゼロで選挙が勝てるとは思わない。建設中の原発については、安全が確認されれば再稼働という方針であり、建設するのは電気事業者自身の問題である」と語った。
いずれにしても、政府は原発ゼロの選択肢を決めたが、閣議決定はされていない。原発ゼロに基づきエネルギー基本計画を策定することになるが、選挙が目前のため、政府が方針決定を急いだこともあり整合性を欠くと指摘されている。