2012.10.01 のニュース
政府の原発ゼロは再度検討へ ―長期エネ見通しより当面の対策をー
エネルギー基本計画策定の審議は中断しているが、政府方針の「原発ゼロ」の解釈をどうするか、『革新的なエネルギー戦略を踏まえつつ議論を行なう』との閣議決定の扱いな
ど、これから審議を行なうにあたって議論が再燃しそうである。だが長期エネルギーより当面の対策を検討することが急務となってきた。
政府のエネルギー・環境会議で決めた「2030年代に原発ゼロを目指す」との方針が、閣議決定に至らず、審議中の「エネルギー基本計画」に差し戻しとなり、再度、検討することになった。エネルギー基本計画は、エネルギー基本法に基づくもので、経済産業大臣が総合資源エネルギー調査会の意見を聴き作成、閣議で決定、国会に報告することになっている。政府による審議の差し戻しはエネルギー問題の基本政策を先送りしたことになる。
消費税の増税の成立や近いうちに解散などの3党合意、民主党の代当選、野田首相の国連出席など、政治日程が詰まっていたため8月末の方針決定が遅れ、14日のエネルギー・環境会議でようやく決定された。だが、党内で意見がまとまらず、19日の閣議で原案決定はできず、「エネルギー環境政策は、革新的なエネルギー戦略を踏まえて関係自治体や国
際社会など、責任ある議論を行ない国民の理解を得つつ、柔軟性をもって不断の見直しを行ないながら遂行する」としており、政府方針を尊重すると認めるに止まった。これによって『政府の方針を踏まえる』ことが原発ゼロを容認するのか否か、総合エネ調の委員のなかで解釈が分れたため混迷が続いている。
この「原発ゼロ」方針についても、「安全性が確認できれは再稼働ができる」との意見や、計画中の原発も着工を認めるとの見解も出されたことで、矛盾点が指摘されている。
いずれにしても、原発ゼロを巡って議論が再燃するが、総選挙の結果では、政権が交代して白紙撤回となる公算もあるため、国民の問面識が薄れそうである。20~30年先の
議論よりも、足元の3年程度のエネルギー政策の議論が先であるとの意見も出ている。この夏場は節電で推力不足を乗り切ったが、今冬の電力不足の対応が求められている。
今回の原発ゼロの方針が出た時点で社会の流れも大きくかわりつつある。民主党に対する批判が強くなっており、信頼を失いつつあることで、政権交代が現実味を帯びてきた。
脱原発に対して、これを再生可能エネルギーでカバー(現行から3倍)することも現実的にみて無理であるとの見方も多くなってきた。固定買取制の実施で太陽光発電がスタートしたが、先進のドイツなどヨーロッパではすでに計画が破綻しており、いずれは電力料金の大幅アップか買取価格の引き下げという実例が警告となっている。現行の42円/kWhでは、①最終的にはユーザーが値上げ分を負担することになる、②新規事業として参入して利益が確保できる事業は誰かが大損する、などの反論も出てきた。
反原発については、再生可能エネルギー、環境対策など、様々な角度から議論されているが、エネルギーの供給不足分は当面、化石燃料でカバーすることが重要であることを再認識して、冷静に議論すべき時期にきたようである。