2012.10.31 のニュース
石油の安定需要確保で具体策を ―石油火力のリプレースは今後も検討―
木村石油連盟会長は、25日の業界紙との懇談会で、「エネルギー政策の見直しの議論は中断しているが、今後に検討すべき石油政策について、①石油の安定需要を確保するための具体策の提示、②石油火力のリプレースと排煙脱硫装置の設置、③ガス事業の規制改革の議論を早期に実施すべきである」と述べた。
審議が中断しているエネルギー基本計画は、原発の依存度を除いたその他のエネルギー政策については、ほぼ議論を終えており、石油の重要性、サプライチェーンの維持・強化、石油柑製業の国際競争力・経営基盤強化、などの項目については、すでに来年度予算要求が行なわれている。これらの点は木村会長も評価できるとしているが、今後の検討課題として、石油の安定需要確保の具体策の提示を求めている。
石油業界に対して、平時、緊急時に問わず安定供給を求められているが「その前提には平時から安定需要が確保されるべきである」というのが木村会長の持論である。現在のように需要減少が続くと、供給手段であるローリー、内航タンカー、SSなどが減少して、緊急時に供給要請があっても対応ができなくなる。そのため平時から需要を確保する具体
策として、学校、病院、自治体などの施設で石油を消費し、備蓄することなどを要請している。
石油火力発電のリプレースと排煙脱硫装置の設置は、石油業界が電力業界に以前から要請しているものである。石油火力は、1979年のIEA閣僚理事会で、石油の消費抑制から「ベースロードの石油火力の新設、リプレースの禁止」が定められた。日本は、この決定を遵守して、以後、石油火力の新設を行なっていない。その背景には、脱石油、温暖化対策としての原発推進の政策もあった。また、コスト面で石炭、LNGの方が割安であることからも、石油火力の稼働は一気に減少した。その結果、2010年の電源構成は石油が7%へと減少、水力の8・5%より低い水準となった。現行のエネルギー基本計画では、2030年で石油を2%に引き下げ、原発は53%に引き上げる計画となっているが、今回のエネルギー政策の見直しによって、石油の構成比は増加するものとみられる。
福島原発の事故の影響で、一時は全54基の原発が停止となった。そのため、原発停止分が石油火力にシフトしており、石油業界は、電力各社の要請に応じて、C重油、生だき用原油を供給している。その結果、足元の石油の構成比は15%程度までアップしている。しかし、石油火力設備は、現在のところ新設、リプレースする計画はない。一方、LNG火力の新設は30基、石炭は3基が計画されている。電力の安定供給を確保するならば、石油火力に一定の需要を確保すべきであり、リプレースする握記は、HSC重油を受け入れることができるよう排煙脱硫装置を設置すべきとの要求は当然である。これらの問題は、石油と電力の当事者間の問題であるとして、エネルギー基本計画の中で議論から外れているが、引き続き検討課題となる。
ガス事業については、ガスの高度化利用、広域パイプライン構想などが議論されているが、石油と公平性を保つためにも、規制改革の議論を開始することを要請している。